義があればこそ!元人質・徳川家康が自分の経験から語る「人質のとり方」とは?:2ページ目
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謀叛を防ぐには、人質よりも義が大事
されども質のみを頼むべからず。わが義あるをもて。人の不義なるをうたば。石をもてかいこをうつが如しと仰られき。(駿河土産。)
※『東照宮御実紀附録』巻二十五
しかし家康の話には、もうちょっとだけ続きがあるのです。
【意訳】確かに人質は効果的であるが、そればかりに頼るのはよろしくない。
人質よりも謀叛を防ぐ効果があるのは、我が義を天下に示すこと。
義あればこそ背くことは不義となるし、不義の輩に味方する者はそう多くない。
味方が集まらず不利となれば物理的に謀叛を思いとどまるし、謀叛に踏み切ったところでこれを鎮圧するのはたやすかろう。
喩えるなら、石をぶつけて蚕をつぶすようなものじゃ。
……とか何とか。最後の喩えは微妙ですが、確かに義があれば人は従い、義がなければ人は離れていきます。
生き馬の目を抜くような戦国乱世にあって、反復常なき武士たちが心の底で求めていたものを、家康は見抜いていたのでした。
だからこそ、敵からは狸親爺と言われても人は従い、ついには天下をとるに至ったのです。
終わりに
以上、江戸幕府の公式記録『徳川実紀(東照宮御実紀附録)』より、家康の語る「人質をとる心得」を紹介してきました。
家族を殺される人質の恐怖よりも、綺麗ごとであっても義こそが人を結びつけるとの教訓が、現代の私たちにも響くのではないでしょうか。
世が乱れ、人々が義を忘れ去ろうとしていたからこそ、たとえ表向きであっても義を掲げた家康が武士たちの心を惹きつけたのかも知れませんね。
※参考文献:
- 『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション
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