チーズケーキはいつ「定番」になった?日本人のチーズおよびチーズケーキ受容の歴史【前編】:2ページ目
明治時代に紹介され始める
もう少し、明治時代の日本人とチーズケーキの関係について詳しく説明します。
日本で初めてチーズケーキが紹介されたのは、1873年に刊行された『万宝珍書』という百科事典に近い書籍の中でのことで、ここで最新の洋菓子としてライスチースケーキという名称が出てきます。当時はチーズのことをチースと表記していました。
また、少し後の1889年に刊行された岡本半渓の『和洋菓子製法独案内』でも、やはりライスチースケーキが紹介されています。詳しいレシピは不明ですが、ライスというくらいですから、当時はチーズと餅のようなものを混ぜた生地が使われていたのでしょう。
ちなみに、ジャーナリストの村井弦斎が著した『食道楽』には、チーズの食べ方としてソフレーというレシピが紹介されています。
これは現在のスフレチーズケーキに近いもので、レアチーズケーキやベイクドチーズケーキよりもこれが先に紹介されたのは、日本人にとって馴染み深かったカステラに近かったからかも知れません。
ちなみに後編でも述べますが、スフレチーズケーキの発祥は日本だと言われています。これが本当なら、まだ当時多くの人にとって馴染みが薄かったチーズすらも、日本人は輸入直後からさっそく独自のアレンジを利かせて食べる方法を模索していたことになります。
浸透しないチーズ
いずれにせよ、この段階ではまだチーズケーキは普及しませんでした。
多くの定番洋菓子の場合、「明治時代に特定の洋菓子店が日本初の〇〇ケーキを発売した」と何からしらの記録が残っているものですが、チーズケーキの場合は当初から誰も売るつもりがなかったのか、そういった記録が見当たりません。
理由はいくつか考えられます。明治時代はまだ肉食が解禁されて間もない頃で、牛肉や牛乳、バターなどは珍しくなかったものの、人々はチーズの独特の味や匂いにはまだ馴染めなかったのかも知れません。
また、冷蔵技術が発達していないので、ケーキ自体がまだ高級品だったことも大きいでしょう。
【後編】では、戦後にようやくチーズケーキが普及するようになった流れを解説します。
参考資料
モンテール スイーツ学園
桜雨のおいしいブログ
パティシエントマガジン
cheese cake