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食い物の怨みは恐ろしい…『黒甜瑣語』が伝える落武者と馬夫のエピソード【どうする家康 外伝】

食い物の怨みは恐ろしい…『黒甜瑣語』が伝える落武者と馬夫のエピソード【どうする家康 外伝】:2ページ目

……かの武者、馬夫を胴切りにして腹中をかきさがし、いま食ひしと云ふ飯をすくひ取り、血をしたてて屠り居たり。……

※人見蕉雨『黒甜瑣語』

例の武士が馬夫の胴体を真っ二つに斬り捨て、腹の中へグチャグチャと手を突っ込んでいるではありませんか。

内臓から立ち上る湯気。武士は馬夫の胃袋から先ほど食ったという飯を手ですくい出し、血がしたたるのも構わず食い始めました。

既に噛み砕かれて、胃液や血も混ざってお世辞にも美味くなさそうですが、そこまで腹が減っていたのでしょうか。正気の沙汰ではありません。

まったく馬夫にしてみればいい迷惑です。こんな事なら、武士を先に行かせて食後の湯でも飲んでいた方が、まだ生き延びられたかも知れませんね。

終わりに

などという出来事が京都であったそうな……と、細井熙斎(ほそい きさい。出羽久保田藩の藩校・明徳館教授)が語っていました。

久保田藩士の人見蕉雨(ひとみ しょうう)はそれを『黒甜瑣語』に記したのですが、真偽のほどはともかく、極限状況下における人間は何をしでかすか分からない一例と言えるでしょう。

今も昔も、腹が減った時ほど正常な思考ができないことはありません。何はなくともまずは腹にモノを入れて、いつも冷静でありたいものです。

※参考文献:

  • 氏家幹人『武士マニュアル』メディアファクトリー新書、2012年4月
 

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