トンデモか否か!?意外と根強く残っている「武将・上杉謙信は女性」説を整理してみる【後編】:2ページ目
③「生涯不犯」の謎(2)
もうひとつ「性的不能説」もあります。が、これも同性愛者説と同じく、それを証明する資料も否定する資料もないので何とも言えません。
個人的には「性的不能説」は仮説としては納得がいくものの、逆に、そういえば戦国武将はみんな正妻や側室を得てたくさんの子をなしていますが、中に性的不能だった人はいなかったのだろうか? と不思議になります。
今でこそ、男性のEDは治療可能なものとして認知されるようになりました。しかし、現代社会などよりも計り知れないストレスにさらされていたであろう戦国武将が、誰も性的不能ではなかったというのも奇妙な気がします。
話を戻すと、謙信本人が熱心な仏教信徒だったことから、仏教の教えを固く守ったのではないかという「宗教戒律説」もあります。実際、江戸時代の軍記物『越後軍記』には軍神への帰依を理由に色欲を拒んだと記されているそうです。
ただ、『越後軍記』は後世の二次史料なので信憑性は高くない上に、謙信は「不邪淫」以外の戒律はほとんど破っています。
また「名代家督説」もあります。もともと、謙信は正統の後継者ではなく、あくまでも前の当主である晴景の子供が成長するまでの「つなぎ」でした。しかしその謙信が実子を持てば、必ず後にいざこざが起こります。それを防ぐために婚姻を拒んだという説です。
これも証拠はないのですが、最も真っ当な仮説に思えますね。もちろん、真っ当だから正解とも限らないのですが。
少し長くなりましたが、こうして最後に「謙信=女性説」が来ます。彼が女性だったなら「生涯不犯」の理由も説明がつく、というわけです。
3ページ目 ④恋愛ものが好きだった謙信、瞽女(ゴゼ)歌の存在