薬師如来、観音菩薩…古代日本では仏像は敵を呪い倒すための”呪具”だった!?:2ページ目
民衆の欲望から国家の安泰へ
観音菩薩も同様です。いわゆる「観音様」ですが、観音様とひと口に言ってもさまざまな種類があり、その中でも千手観音や十一面観音などは、もたらす御利益の数を象徴しています。
これは見方によっては、なかなか満たされない人間の欲望の数を示していると捉えることもできますね。
この世に生きている人間の欲望を満たしてくれることを、「現世利益」と言います。
このように、仏様が現世利益をもたらしてくれるという考え方は、個人のみならず国家にも利用されました。中世の政権は仏教を「国家鎮護」に活用したのです。
特に有名なのは奈良の朝廷で、東大寺の大仏などはその最たるものです。
当時の政府は薬師如来の功徳でもって国を治めようとしました。そのため、奈良には今でも薬師如来の仏像がたくさん残されています。
この時、仏像には皇族の病気の平癒や魔除け、民衆への功徳のおすそ分けなどの意味が付与されていたのでしょう。個人に対して御利益がもたらされるという考え方が、国の安泰へと拡大解釈されていったのです。
そして聖武天皇などは、全国に国分寺の建立を指示しました。余談ですが、国分寺の本尊や釈迦如来であるとされていますが、なぜか現代に伝わるのは薬師如来の像が多いです。