江戸っ子たちの人気スポット!年間20万人が楽しみにした「大山詣り」の魅力を紹介:2ページ目
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これが粋!?大山詣りの江戸っ子スタイル
さて、大山詣りと言ってもただ行けばいいというものではなかったらしく、江戸っ子たちの間では独特なルールを設けていたようです。
「そうだ。大山、行こう。」と思い立ったらすぐ出発するのではなく、まずは隅田川で水垢離(みずごり)を行い、心身を清めます。いわゆる精進潔斎で、その日の夜は心身を汚してしまう酒や生臭物(肉や魚、ネギやニンニクなど精のつく野菜など)、そして性行為を我慢します。
そして翌朝、心身が清められたことを証する白装束に身を包み、貴重品に加えて奉納用の木刀を持っていざ出発です。
なぜ木刀を奉納するのかと言うと、かつて源頼朝(みなもとの よりとも)公が戦勝祈願のために太刀を奉納した故事に由来するもので、奉納の証として別の木刀を授かり、神棚に祀ります。
江戸っ子たちの間では、奉納する木刀は大きいほどよいとされ、中には6mにもなる木刀を奉納したツワモノもいたそうですが、そんなものを担いでの大山道中は大変だった一方、さぞかし豪傑気分だったことでしょう。
かくして無事に大山詣りを終えたら、精進落としとして帰りの宿場でご馳走や博奕、女遊びを楽しみ、江ノ島や金沢八景の観光へ出かけたのでした。
帰りを待っている奥様や子供たちに、お土産を忘れてはいけませんよ。
終わりに
そんな男たちの様子は浮世絵に描かれたり、古典落語「大山詣り」の題材になったり、庶民の文化として深く定着していたことから、平成28年(2016年)には文化庁認定の日本遺産に選出。
現代でも多くの観光客で賑わっていますが、コロナ自粛が明けたら、是非ともお運びいただけると嬉しいです。
※参考文献:
- 田口学ら編『神奈川のトリセツ 地図で読み解く初耳秘話』旺文社、2021年3月
- ミニマルら『イラストでよくわかる 江戸時代の本』彩図社、2020年8月
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