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日本経済の必須スキル!渋沢栄一が明治時代に導入した簿記システムのエピソード

日本経済の必須スキル!渋沢栄一が明治時代に導入した簿記システムのエピソード:2ページ目

不問に処そうと思ったものの……

「アンタのそういう気取りすましたところが気に入らないのだ!」

飛んでくる拳を見据えながら、若い頃に武芸を叩き込まれていた栄一はこれをかわしました。

(取りおさえるのは訳もないが、痛めつけたり恥をかかせたりしたら後がこじれそうだし、疲れて怒りが収まるのを待つとしよう)

出納局長は栄一より若く、タッパ(身長)もありましたが、どうも武芸などの心得はないようで、怒りで動作がブレています。

(格闘は、怒りに呑まれたヤツが負ける)

果たして攻撃が当たらないまま、振り上げた拳のやり場に困った様子の出納局長に、栄一は一喝しました。

「ここはお役所ですぞ。卑しい人間の真似事はおやめなさい!」

これが決定打となり、出納局長は何も言えず退室して行ったのでした。

その後、出納局長について「上司に楯突いたばかりか、(未遂とは言え)暴力を振るうとはけしからん」などと処分を求める声もあったようで、栄一としては「こんな下らないことで、有為の人材を失うのはもったいない」と不問に処したかったようです。

しかし、口の早い者が太政官(だじょうかん。政府の最高長官)にまで事の次第を報告してしまったがためにもみ消せなくなり、結局この出納局長は免職となってしまったのでした。

終わりに

そんな事があったものの次第に簿記システムは普及していき、現代では企業会計の必須スキルとして定着。今日でも、多くの者が簿記検定の取得など勉学に励んでいます。

簿記に限らず、新しい制度を採り入れるのはなかなか大変ですが、今日私たちがその恩恵に与っているシステムはどれも先人たちが努力した賜物であることを思うと、感謝の思いもひとしおというもの。

もし良かったら、簿記もちょっと勉強してみると楽しいですよ!

※参考文献:
渋沢栄一『現代語訳 論語と算盤』ちくま新書、2019年10月
資格の大原『土日で合格る日商簿記初級 第2版』中央経済社、2018年12月

 

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