戦国時代まで遡る、土佐の郷土料理「カツオのたたき」の表面が炙られている理由:2ページ目
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「うるせぇんだよ、たまに食中毒(あた)るのが怖くてカツオが食えっかよ!」
「敵の矢玉に当たるのが怖い臆病者の指図なんぞ、土佐の男が聞くもんか!」
「ぐぬぬ……」
口で言っても聞かないならば、実力で黙らせるよりありません。その後、山内家は反抗的な者たちを徹底的に弾圧。服従を強いるため、生活様式にも様々な規制が加えられ、カツオの生食も禁止されてしまいました。
「どうする?」
「しょうがねぇから、表面だけ焼いてやろうぜ。もし役人に見つかっても『あぁすんません。生焼けでした~』とか言い逃れりゃいいや」
という訳で、土佐国ではカツオの表面だけをあぶったスタイルが現代に伝わったということです。
土佐の反抗心が生み出した「カツオのたたき」
しかし、いざカツオの表面をあぶってみるとこれがなかなか香ばしく、生の部分と相まって絶妙な味わい。焼き方や薬味ダレの工夫によって意外にヒットしたようです。
これが表面だけでなくお達しどおり完全に火を通していたら、きっとパサパサ過ぎてすぐに廃れてしまったかも知れません。少しでも生の部分を残してやろうと表面だけあぶった工夫(ささやかな抵抗?)が功を奏したのでした。
土佐の反抗心が生み出した「カツオのたたき」、今年も初鰹が楽しみですね!
※参考文献:
平尾道雄『平尾道雄選集 第二巻 土佐 庶民史話』高知新聞社、1979年11月
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