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日本神話の怪物ヤマタノオロチには足があった!?島根県の博物館に聞いてみた

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蛇を龍と同一視していた?中世人の感覚

そして、博物館からご回答が届きました。本題について頂いたメールを抜粋します。

ご質問がございました映像(プログラム名:「中世のヲロチ神話」)は、中世の時点における「ヤマタノヲロチ神話」を紹介したもので、制作にあたっては、「雲州樋河上天淵記」(注1)という史料を基にしております。しかし、その中には「大蛇に足がある」や「空を飛ぶ」という記述は見られません。

映像の背景となった中世は、大蛇と龍が緊密に結びつき、大蛇が龍のイメージとして認識されてきた時代でもあったことから(注2)、「中世のヲロチ神話」の制作にあたっても、そのような時代背景をもとに八岐大蛇を描写していますが、複数の資料や内容を用いて映像を制作したことに関する説明不足もあり、今回のような疑問を持たれたかと存じます。

歴史系の博物館である当館としては、展示や教育普及活動などの情報発信は、正確な情報に基づいて行われなければならないと考えております。このため、調査研究に裏付けられた展示等により、真正性や客観性を保ちながら、広く皆様から信頼される博物館を目指し努力してまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

注1:「雲州樋河上天淵記」の制作年代は、奥書より大永3年(1523)であったと考えられます。
注2:黒田日出男『龍の棲む日本』(岩波新書、2003年)、3(ギリシャ数字の3です)「龍体の神々と国土守護」などを参考としました。

ちょっと長いので要約すると、博物館からの回答趣旨は以下の通りです。

一、映像制作に際しては戦国時代の史料『雲州樋河上天淵記(うんしゅうひのかわかみあめがふちき。大永3・1523年)』を元にしているが、史料に「ヤマタノオロチに足があり、空を飛んだ」という描写はない。

一、では、なぜそのように描写したのかと言うと、中世の日本では蛇を龍と同一視する感覚があり、そこでヤマタノオロチも「龍のように足があり、空を飛ぶ」という描写を採用した。

一、ちょっと説明不足だったが、これからもよりよい歴史情報を発信していく。

……とのことで、丁寧なご回答、誠にありがとうございます。ちょっと従来のイメージと違ったので面食らいましたが、古くから何度も語り継がれてきた有名な物語なので、飽きられないよう、オリジナリティを出したかったものと思われます。

とまぁこういう事もありますから、博物館など公的機関の情報であっても鵜呑みにせず、感じた疑問は積極的に訊いてみると、新たな発見が得られるかも知れません。

※参考文献:
戸部民夫『日本神話-神々の壮麗なるドラマ』新紀元社、2003年10月
黒田日出男『龍の棲む日本』岩波新書、2003年3月

島根県立古代出雲歴史博物館

 

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