愉快な歌なのに(泣)しょ、しょ、証城寺♪童謡「証城寺の狸ばやし」に歌われなかった悲しすぎる結末:2ページ目
月夜の狸ばやしに大興奮!
……ある月の晩のこと。和尚さんが寝ていると、寺の庭先で何やら賑やかな音がします。
太鼓の音や笑い声……唄なんかも聞こえてきて、ワクワクした和尚さんは居ても立ってもいられなくなって庭に飛び出しました。
「おぉ……これは!」
見れば威勢よく腹鼓(はらつづみ)を打ち鳴らす親分狸を中心に、一緒に腹鼓を打つ者、唄う者に踊る者……みんな、みんな、何十頭の狸です。
和尚さんは確かに驚きました。お化けが怖いなんてのは当たり前ですが、狸が祭りばやしに興じている姿は、天下広しといえどなかなか見られるものではありません。
「どうじゃ和尚!参ったか!」
目を丸くした和尚を前に、勝ち誇る親分狸。ここで和尚が一言「参った」と言っておけば、後の悲劇は起こらなかったかも知れません。
「わ……わ……」
和尚は完全に驚いていましたが、その感情は恐怖よりも歓喜の勝ったものでした。
「……わぁい!わしも負けんぞ!待っておれ!」
そう言うなり奥へ引っ込み、自慢の三味線を持ってきました。
「お主らが腹鼓なら、わしはこの三味線で勝負じゃ!」
さっきまで気圧されていた和尚が元気を取り戻したのを見て、親分狸は気が気ではありません。
「おのれ和尚め……野郎ども、こうなったら本気で行くぞ!」
「「「おおぅ……っ!」」」
それからと言うもの、和尚と狸たちは毎晩々々、夜が明けるまで腹鼓と三味線で祭りばやしに興じたそうで、狸たちはともかく、昼間の勤行(おつとめ)もあろう和尚の睡眠不足が気になるところです。