前世の記憶がきっかけで?平安時代のやんごとなき姫君と冴えない衛士の駆け落ちエピソード【三】:2ページ目
2ページ目: 1 2
瀬田の唐橋で追手を足止めし、武蔵国へ
……一方その頃。
「ちょっとここでお待ち下せぇ」
姫宮さまを背負って近江国は琵琶湖に架かった瀬田の唐橋(現:滋賀県大津市瀬田~唐橋町)までやって来た衛士は、追手を警戒して橋を壊しておくことにしました。
まず姫宮さまを背負って対岸まで渡り、姫宮さまを下してから橋の真ん中まで戻り、一間(※橋げたと橋げたの間。およそ数メートル)ばかり橋板を外しておきます。
こうしておけば、追手の大軍はこの橋を渡れずに琵琶湖を迂回するか、あるいは橋を修繕するよりなく、いずれにしても大幅に時間が稼げます。
「……ふぅ。これでよし!」
作業を終えた衛士は、再び姫宮さまを背負って街道を駆け続け、七日七晩かけて念願の故郷・武蔵国へ帰り着いたそうです。
一足違いで瀬田の唐橋まで追いついた追手の者たちは、歯がみしたものの打つ手もなく、橋の修繕で三か月も時を費やしてしまいました。
それでも任務を完遂するべく街道を追いすがり、ふらふらになりながらもようやく武蔵国へたどり着いたのですが、衛士と姫宮さまはどうなってしまうのでしょうか。
※参考文献:
辻真先・矢代まさこ『コミグラフィック日本の古典15 更科日記』暁教育図書、昭和五十八1983年9月1日 初版
藤岡忠美ら校注 訳『新編日本古典文学全集 和泉式部日記 紫式部日記 更級日記 讃岐典侍日記』小学館、平成六1994年9月20日 第一刷
ページ: 1 2