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シン・ゴジラ「ヤシオリ作戦」の元ネタになった「八塩折の酒」ってどんなお酒?

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何度も搾った、強い酒

さて、この八塩折の酒について、あまり詳しいことは書かれていませんが、『日本書紀』によれば「衆菓(もろもろのこのみ=木の実)」をもって醸すことが書かれています。

【原文】「汝、可以衆菓釀酒八甕……」

※『日本書紀』巻第一 神代 上より

イメージ的には、お米で造った現代的な清酒よりも、例えば爛熟した柿が発酵してできたような、濁酒(どぶろく)や猿酒(さるざけ)に近いものだったのでしょう。

そして「八塩折」の意味を分解していくと、「八」とは「八百万(やおよろず)の神々」などのように「とにかくたくさん」を表わす吉数(末広がりで縁起がよい数)、「塩」とはここでは酒を造る過程で生じる醪(もろみ)の搾り汁、「折」とは折々のように繰り返すことを意味します。

つまり八塩折の酒とは「たくさん(八回)搾った酒」という意味になりますが、そもそも「搾る」とはどういう行為なのか、酒造りをごくざっくりと見ていきましょう。

酒を造るには、素材と麹(こうじ)菌を仕込んだ水を発酵させた醪を搾って濾して寝かせるのですが、醪を搾った汁に再び素材と麹菌を仕込んで搾り、またその汁に素材と麹菌を仕込んで……というイメージです。

……とまぁ「酒で酒を仕込む」と口で言うのは簡単ですが、実際には温度調整など色々デリケートなのは言うまでもありません。

いずれにせよ、この搾りを繰り返すほどアルコールが強くなるそうで、さすがの八俣遠呂智も酔いつぶれてしまったのでした。

※余談ながら、酒豪のことを「蟒蛇(うわばみ)」と言いますが、昔から大蛇と酒には浅からぬ因縁があるようです。

終わりに

八俣遠呂智を酔いつぶした八塩折の酒に準(なぞら)えて、ゴジラに一服盛ろうとした「ヤシオリ作戦」。

日本人は神代の昔から、恩恵と脅威をもたらす自然を愛しながらも深く畏れ、その精神が「八俣遠呂智」や「ゴジラ」など数々の怪獣を生み出してきました。

いかに時代が移ろい、科学が発展しようとも、この「畏れ」こそが自然に対する謙虚さを保ち、共に幸(さきわ)う日本人の生き方に適う根本精神です。

近年、八塩折の酒を再現したというお酒が頂けるそうですが、その機会に与(あずか)れた折には、天地神明に感謝を奉げたく思います。

 

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