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脂が抜けたからこそ、大技を決められる。紀州・熊野灘のダイナミックな「さんまずし」

脂が抜けたからこそ、大技を決められる。紀州・熊野灘のダイナミックな「さんまずし」

「さんまずし」と聞けば、最近では北海道のトロサンマが乗った寿司を連想される方が多いのかもしれません。回転寿司でもポピュラーな、あれ。確かにあれは、美味しい。脂が乗りまくったサンマはもちろん、上にちょこっと乗っかったネギまで、美味しい。でもやはり、サンマの寿司といえば三重県から和歌山県に連なる紀州・熊野灘沿岸一帯で食される「さんまずし」が、一番です。「いや、白飯に秋刀魚を頭からぶち刺した某国のスケキヨ丼が、ベスト」という方はちょっと、すんません。


熊野灘へサンマがやってくるのは、晩秋です。北の海から南下してきたサンマは、そのハードな運動により最大の売りである脂分がほとんど抜け落ちているといいます。紀州のさんまずしはそれを逆手に取ったかのように、開いたサンマを一匹まるごと、それも頭つきで酢飯になじませるというワイルドスタイル。数百円で帰る持ち帰り用でさえ、頭つき。ギットギトのサンマでこんなことをやったら、ちょっと、大変です。あっさりした旨味を持つからこそ、こんなダイナミックな寿司が可能になったのでしょう。

このさんまずしのサンマの開き方、地域によって異なります。とあるエリアでは背から開き、違うとこでは腹から開く、みたいな。「背」と「腹」、どっちを開くか。まるで、鰻の関東「背開き」と関西「腹開き」の違いみたいです。武士が多く、切腹を連想させる「腹開き」を嫌ったという説もある、関東。対して、商人主流・武士大嫌いで「なにえらそうにしとんねん」とばかりに腹を裂く、関西。それと似た現象が、さんまずしを巡って起こってるのではないか。細かく調査すれば、熊野灘の東西の分かれ目が現れるのではないか。

そんなことを考え、地元の学校NHKなどが調査をしたそうです。で、結論としては、よくわからんということになったそうです。尾鷲市などは市内でも「背」と「腹」が混在してるんだとか。難しく考えず、勝手に思索を巡らせ楽しみながら食べるくらいが、一番なのかも知れません。あんまり調べると、「開きやすい方で開ける」という、知りたくない真実に到達する可能性もありますし。

それに肝心なのは、腹の開き方の違いではなく、味の違い。ですが、これは作る人・店によりけり。一般店の上品な酢加減のものもいいですが、スーパーやコミセンみたいなところで売ってる強烈に酸っぱいものも、それはそれで味があります。同じく紀州の郷土料理・めはりずしと共に、本当にどこでも売ってて、おまけに安い、さんまずし。晩秋の熊野灘を見ながら買い食いをしまくり、味と開き方の差異をリサーチしてみるのも楽しいかも知れません。

秋刀魚寿司 – Wikipedia

さんまから分かる熊野の食文化 – 日本列島ふるさと新聞

この街のはてな | 尾鷲市 – NHK津放送局

 

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