「酒好きが祟ってトイレで脳卒中」はウソ?上杉謙信の本当の死因はなんだったのか:2ページ目
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手掛かりは謎の「虫気」
まず、当時の上杉景勝の書状に「去十三日謙信不慮之虫気」とあります。訳すと、13日に謙信が「不慮の虫気」で亡くなったということですが、虫気(むしけ)とは腹痛のことです。
今わの際に腹痛を伴っていたことが分かります。
確かに腹痛であれば、辞世の句を読んだり遺言を残したりすることも可能でしょう。
また先述の、謙信が倒れた「閑所」についても、これは「静かな空間」「私室」としても使われる言葉なので、「トイレで脳卒中で倒れた」とは限らなくなってきます。
軍記の記述が解釈されていくうちに、お酒好きの謙信はトイレで脳卒中で倒れた、というもっともらしいストーリーが独り歩きし始めたのではないでしょうか。
では本当の死因はなんだったのかというと、これははっきりとは分かりません。
「虫気」の記録があるので、腹痛の症状を伴っていたことは間違いないのですが、病気だったのか、毒を盛られたのか、完全な真相は分からずじまいです。
はっきりしているのは、次の3つです。
①おそらく急性の腹痛だった
②当人に「辞世の句・遺言を準備しよう」と思わせるほど激しい腹痛だった
②倒れてから亡くなるまで9日~13日と5日間苦しんでいる
これらの内容を手掛かりに、医学に詳しい人ならいくつかの死因を挙げることができそうですね。
これまでは素朴な病死だったと考えられていた上杉謙信ですが、このように考えていくと暗殺の可能性も捨て切れない、戦国時代の闇を感じさせる「謎の死」だったと言えるでしょう。
参考資料
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