徳川家康も苦笑い…偏屈すぎる戦国武将・大久保彦左衛門のとんだ「あいさつ回り」:2ページ目
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それを聞いた彦左衛門は「なるほど、そりゃもっともじゃな」という事で、さっそく翌朝、あいさつ回りに出かけると、出迎えた老中たちの「これは彦左殿、珍しいおいでですな(どういう風の吹き回しだ?)」との言葉にこう答える。
「わしは貴殿らに取り入る必要などないが、それでは子孫たちが困るであろうから、こうしてあいさつに参ったのじゃ」と。
……いやいや、それを言っちゃせっかくのあいさつが台無しです。絶世の美少女が来たとでも言うならまだしも、誰が真っ向から「お義理でご機嫌とりに来てやったぞ」と言われて、心象をよくするものでしょうか。
親族たちの心配を受けてさっそく実践に移す素直さと行動力は見上げたものですが、先方に本心を包み隠さず話してしまうあたり、もはや何とかと紙一重な純粋さです。
もっとも、そんな彦左衛門だからこそ、家康はじめ広く天下の人々から愛されたのでしょう。
ちなみに、彦左衛門の子である大久保忠名(ただな)は父の死後にその名跡を継ぎ、代々旗本として徳川将軍家に忠義を尽くし、大久保の家名を存続させましたが、彦左衛門のあいさつ回りが少しは役に立ったのでしょうか。
※参考文献:
古川哲史ら校訂『葉隠 下』岩波文庫、2011年6月
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