大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の予習におすすめ『吾妻鏡(あづまかがみ)』の鏡って何?:2ページ目
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後世の「鏡」となる鎌倉武士たちの歴史
結論から言うと、『吾妻鏡』の鏡とは、私たちが日ごろ使っている鏡(ミラー)そのもの。
古典に興味のある方なら、他にも『大鏡(おおかがみ)』や『今鏡(いまかがみ)』などの書名を目にしたことがあるかも知れません。
鏡は万葉仮名(まんようがな)で「可我見」すなわち「我を見るべ(可)し」と書きますが、これは鏡自身が「私を見てあなたの姿を映し、自身を省みなさい」という意味になります。
……聞く人の 可我見(かがみ)にせむを 惜(あたら)しき……
【原文】……伎久比等能 可我見尓世武乎 安多良之伎……
【意訳】……聞けばその人の教訓となるだろうに、もったいない……※大伴家持(『万葉集』第20巻・集歌4465)
そのことから、鏡とは「お手本、教訓」の意味も持つようになり、先ほど登場した作品も古老の昔話という形で歴史の教訓を伝え、模範を示しているのです。
※ちなみに「鎌倉武士の鑑(かがみ)」などと言いますが、この鑑も鏡と同じ意味です。
つまり『吾妻鏡』とは「教訓が込められ、模範とすべき東国武士たちの歴史」ということになります(もちろん反面教師も登場しますが……)。
頼朝公の挙兵前夜(それこそ流人時代)から幕府草創を補佐し、承久の乱(承久3・1221年)を経て武士の世を実現した北条義時(ほうじょう よしとき)はじめ、鎌倉武士たちのエピソードを後世の「鏡」とするために編纂された『吾妻鏡』。
大河ドラマが放映される来年までしっかり読み込んで、主人公の義時だけでなく、お気に入りの武将を見つけて欲しいと思います。
※参考文献:
小学館『日本大百科全書ニッポニカ』小学館、1993年4月
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