芥川賞受賞「バリ山行」の”バリ”って何?自由に山を歩いてもいい?悪い?法律の観点で考える『登山道』:2ページ目
登山道が無ければ作ればいいじゃない…大名登山の大倉喜八郎
実は日本で有名なアルプスの一つ、リニア問題でゆれている「南アルプス」はその大部分が特種東海製紙という会社の所有地となっています。この会社は、あの有名な「ホテルオークラ」などを有する大倉財閥の創業した会社です。
この山域の「赤石岳」の登山道は、かつての創業者・大倉喜八郎が88歳の時(大正18年)、「自分の所有地の一番高いところに登りたい」という鶴の一声で切り開かれました。約200人の人足を引き連れて、駕籠に担がれて。この登山にかかった経費は四万円、当時の価値では1億円以上といわれています。
ちなみにこの登山道はその後登山者のために開かれて、山小屋などが運営されています。
で、バリエーションルートって法律違反なの?
前述の③の私有地以外で、所有者が明確に立ち入り禁止を明示していなければ、登山をするのは問題なく、自治体などの管理側はバリエーションルートを歩くことを禁止していないことが多いです。なぜなら、環境への影響が少ないからです。
一般的な「登山道」の存在は、大勢の登山者がそこを歩くことで、植生や環境破壊につながらないようにしているわけです。しかしバリエーションルートは場所によっては月に数人、下手したら年に数人しか歩かないので、影響がほぼないのです。
もし、バリエーションルートが大人気になり大勢押し掛けるようになれば、それはもう「バリエーション」ではなくなり、所有者や管理者が登山を制限する可能性が出てきます。
踏み跡の薄い登山道や沢登りをするのは自由ではあるが、あくまで自己責任。自分の糞尿は簡易トイレキットなどで用を足し、持ち帰るのがマナーです。
とはいえ、驚くことに、日本では「登山道の管理者不明」が多いのが実情なんです。そういった場所では、自治体に問い合わせても曖昧な返答が多いのですが、とりあえず登山する前は、そこがどこの所有地なのかは確認した方がいいでしょう。
ここにあげた例が全てではないですが、国土の7割が森林の日本。意外とグレーゾーンなことが多いのです。