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「愛する男を抱いたこの手がさぞ憎かろう」狂おしく咲き乱れた江戸時代の衆道『男色大鏡』【前編】

「愛する男を抱いたこの手がさぞ憎かろう」狂おしく咲き乱れた江戸時代の衆道『男色大鏡』【前編】

武家社会と町人社会の男色を描く

井原西鶴の「男色大鏡」は、1687年(貞享4年)徳川綱吉が江戸幕府の将軍であった頃に誕生。全8巻にわたる大作で、前半4巻は武家社会における衆道、後半巻では町人社会の歌舞伎若衆の男色を描いています。

戦国時代から引き継がれてきた、精神的なつながりも重んじる、武士同士・主君と小姓などの衆道。そして、若衆方や若女形など美貌の歌舞伎若衆が舞台後、夜は茶屋にて客を相手に性のお勤めをする男色など、さまざまな階級にいる男性たちの愛を取り上げたものです。読者の多くは男性だったそうで、一冊読んだらまた次の一冊が読みたくなる……そんな中毒性のある読み物だったのではないでしょうか。

「愛する男を抱いたこの手がさぞ憎かろう」

表題の「愛する男を抱いたこの手がさぞ憎かろう」は、殿様の衆道の相手を、意に沿わぬまま勤めさせられていた若く美しい武士の言葉。

殿との衆道関係をよしとせず、恋人であるほかの武士と愛し合っていたところ、その不義の現場を密告され、怒り狂った殿に処罰をされる際に吐いた言葉……

すさまじいばかりの感情が込められているようです。

【後編】でも、義理・絆・嫉妬・執着・忠義・愛、さまざまな想いが渦巻いていた男色の世界を描いた『男色大鏡』の中の逸話をご紹介しましょう。

 

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