「福」を呼び込め!陰陽道から生まれた幸運を祝う浮世絵「有卦絵」とは【前編】:2ページ目
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まず女性の後ろに描かれているのは、伊勢神宮の近くにある“二見ヶ浦(ふたみがうら)の夫婦岩”ごしに見る“日の出”です。
この海の沖合約700m先には猿田彦大神ゆかりの輿玉神石が静まり、常世の国といわれる海の彼方の理想郷から降臨する神の依り代であると言われてきました。夫婦岩はこの輿玉神石と日の出を拝む鳥居とみなされています。
この夫婦岩のある二見海岸には「二見興玉神社」があります。有名な伊勢神宮へ行く前には、この場所をお参りして穢れを落とし、浄化した心身で臨むのが、古来からの正式な参拝方法でした。
江戸時代には伊勢神宮への“お伊勢参り”へ詣でる人が数百万人単位でいたといいます。さぞこの夫婦岩をおめでたいと拝んだことでしょう。
安藤広重の浮世絵にもこの太陽が昇る日の出どきの“夫婦岩”が描かれており、この場所が大変な名所であり、当時の人々の信仰のほどが伺えます。
また、上掲の床の絨毯に描かれている模様は大変目をひきますが、伊勢神宮の神紋である「花菱」に大変よく似ているように思えます。
さて次回、後編では“歌川国貞の画『金性の人』”の画面中央にある三幅の掛軸の絵からご紹介します。お楽しみに。
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