ラブシーンの意味、和歌と漢詩の違い、剣璽(けんじ)とは?大河ドラマ「光る君へ」3月10日放送振り返り:3ページ目
まひろが返した陶淵明の漢詩
さて、あふれんばかりの思いを連ねた道長に対して、まひろの返答は一風変わっていましたね。
陶淵明(とう えんめい)の詠んだ漢詩「帰去来辞」です。
帰去来兮 田園将蕪 胡不帰
(帰りなんいざ。田園まさに蕪れんとす、なんぞ帰らざる)既自以心爲形役 奚惆悵而独悲
(すでに自ら心をもって形の役となす、なんぞ惆悵として独り悲しまん)悟已往之不諌 知来者之可追
(已往の諫められざるを悟り、来者の追うべきを知る)実迷途其未遠 覺今是而昨非
(まこと途に迷うこと、それいまだ遠からずして、今の是にして昨の非なるをさとる)※陶淵明「帰去来辞」
意味は劇中で語られていた通りです。これを道長向けのメッセージに言い換えるなら、こんなところでしょうか。
「恋から醒めて、現実に戻って下さい。国が荒廃しているのを、見捨てる訳にはいかないでしょう。過去のことはともかく、未来なら変えられるかも知れません。私たちは道に迷いましたが、まだやり直せるのですから」
私的な幸せに逃避を図る道長に対して、毅然と天下公益を実現する使命を諌めるまひろ。
男性が堅苦しく漢詩を詠み、女性が雅やかに和歌を詠むイメージを真逆にする手法が新鮮でしたね。
まぁ実際のところ、権力を捨てたらロクに生活力もない男なんて、何の魅力もありません。
どのみち、このまま駆け落ちして上手く行くはずがないのは明らかでしょう。