「鎌倉殿の13人」今回は畠山重忠の勝利!組み伏せられた義時に突きつけられる刃…第36回放送「武士の鑑」振り返り:2ページ目
大河史上初?大将同士の殴り合い
義時と重忠は兜を脱ぎ、白刃を閃かせての一騎討ち。兜を脱いだ際、義時は息子の北条泰時(演:坂口健太郎)に預けた一方、重忠には兜を預ける息子がいません。
そこで地面に投げ捨てたのですが、この対比が我が子・畠山重保を喪った重忠の哀しみを表しているようでした。
※ただし史実『吾妻鏡』では現場に庶子の畠山小次郎重秀(こじろうしげひで)がおり、できれば彼らも登場させて欲しかったと思います。
やがて重忠が義時に飛びかかり、馬から落としての組討ちに。周囲の者たちは一切手出しせず、大将同士が殴り合い蹴り合いする描写は、視聴者たちの血沸き肉躍らせたのではないでしょうか。
ひと拳、もうひと拳……これまで殺されていった者たちの怨みがこもったような重忠の拳。果たして組討ちを制した重忠が脇差を抜き、義時の喉笛に突き立てんとした瞬間。
(ドスっ)
この効果音を聞いて、多くの視聴者は「あ、背後から誰か重忠に止め刺したな」と思ったことでしょう。
筆者も「『吾妻鏡』の通りに愛甲季隆(あいこう すえたか)が矢を射たか、あるいは他の主要人物(例えば泰時など)がやったかな」と思ったのですが、そうではなく、重忠の刃が地面に突き立てられた音でした。
重忠があえて止めを外したのは、恐らく「義時なくして鎌倉の再生はありえない」と生かしたか、あるいは「ここで一回死んだと思って、鎌倉再生のため時政と対峙せよ」と迫ったのかも知れません。
実質的に大将の首級を獲った(が、あえて獲らなかった)のだから、今回の勝負は畠山の勝ち。よろめきながら愛馬にまたがり、悄然と去って行く姿は月岡芳年「芳年武者无類」を思わせます。
そしてナレーションで愛甲季隆に射止められたことが告げられ、畠山重忠の乱は幕を下ろしたのでした。
畠山重忠の魅力をこれでもかと詰め込んだ一幕でしたが、個人的にはもう一押し欲しいところ。
例えばせっかく晴れの最期なのだから(1)古式ゆかしく名乗りを上げる(源平合戦の時点で、坂東武者たちはもうそんなことをしなくなっていた)とか、(2)いきなり白刃を交える前に、まず矢合わせ(弓矢での勝負)を挑むとか(※ただし、重忠は既に矢が尽きていた可能性も)。
そりゃ第1回放送(安元元・1175年時点)から30年にわたるつき合いですから、名乗る必要なんてないのですが、重忠の名乗り口上を是非とも聞きたかったものです。