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満開の桜の下には・・・最後の浮世絵師・月岡芳年の名作「新形三十六怪撰 小町桜の精」

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歌舞伎舞踊『積恋雪関扉』

 

天明4年(1784年)11月 、江戸桐座で顔見世狂言で演じられた『積恋雪関扉』という歌舞伎舞踏の演目がありました。

あらすじは・・・

逢坂山の関で、辺り一面の雪景色の中、小町桜と呼ばれる桜の大樹が満開の花を咲かせています。先の帝の忠臣だった良峯少将宗貞が、政変に巻き込まれ今は逢坂の関の近くに隠遁しています。

そこを小野小町姫が通りかかると、関守の関兵衛が応対に出ますが、一人旅の美女を怪しみあれこれ言いがかりをつけます。宗貞が女の顔を見ると、なんと恋人の小町姫とわかり、二人は思いがけない逢瀬に涙します。

そこへ一羽の鷹が片袖をくわえて飛んできました。袖には「二子乗舟」の血文字が書かれています。これは宗貞の弟、安貞が自らの死を兄に知らせるためのものでした。

夜になり庭で関兵衛が一人で雪見酒をしながら星を占うと、今宵、桜を伐りたおし護摩木にして焚けば、大願成就との吉相が出ます。

実は関兵衛こそ、天下を狙う大伴黒主だったのです。そこで関兵衛が桜を伐ろうとすると、なぜか体がしびれて気を失ってしまいます。

するとあたりが一層暗くなり、桜の黒く太い幹の中に美しい女の姿が現れます。恐ろしいほどに美しい女は、目を覚ました関兵衛に近づき、自分は都から来た遊女の墨染(すみぞめ)という者で、関兵衛にあこがれていたといい、恋人になってくれと言うのです。

 

 

さて、月岡芳年が描いた『小町桜の精』ですが、関兵衛を口説いているときの表情だと思いませんか?

墨染は、実は「小町桜の精」なのです。歳月を経た桜の精は人間の姿になって都の遊女となり、宗貞の弟安貞と相愛の仲でした。安貞の死には、大伴黒主が関係していました。

墨染は安貞の仇を討とうとして関兵衛に近づいたのです。血文字の片袖を手に詰め寄る墨染に、関兵衛は大伴黒主の正体をあらわしました。墨染も、桜の花枝を手に桜の精の本性をあらわし、両者は激しく争うのでした。。。というお話です。

この『積恋雪関扉』は歌舞伎舞踏の中でも名作といわれています。小説でも『桜の木の満開の下』という名作がありますが、特に夜の満開の桜の下は注意した方がいいかもしれませんね。

 

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