葛飾北斎の『富嶽三十六景』を彩る鮮やかなブルー ”ベロ藍”!実はドイツで誕生した偶然の産物?
悠然とそびえる富士山と、それを臨む土地の人々の営みを描いた葛飾北斎の『富嶽三十六』。当初は36枚で構成される予定だったが、売れに売れたため10枚追加となり、全46枚揃のシリーズとなったというエピソードが残るほど大人気だった。
その人気は国内だけにとどまらず、海を渡りゴッホやモネ、ドガ、ゴーギャンといった名立たる西洋美術の画家たちに影響を与え、19世紀後半のヨーロッパにおいて、ジャポニズムと呼ばれる日本美術ブームを巻き起こした。
『富嶽三十六景』の魅力の一つがベロ藍と呼ばれる鮮やかなブルーだ。「北斎ブルー」とも称されるベロ藍とはどんな色だろうか。
赤色を作るつもりが何故か青色?実は偶然の産物だった「ベロ藍」
ベロ藍は18世紀の初頭にドイツのベルリンで誕生した。ある日、とある染料職人が赤色の絵の具を作ろうとしたが、必要な材料を切らしていたため、同業者から借りて絵の具の調合を進めた。
すると、どういうわけか赤ではなく正反対の真っ青な化合物が出来上がり、ベロ藍の誕生したのだった。
後日、なぜ青色になったのかを研究したところ、借りてきた材料はその同業者が独自に調合したもので、動物の血液が含まれていたことが分かった。
そして、このベロ藍が日本にも輸入されると、今までには無かった鮮やかな色が瞬く間に大流行。葛飾北斎や歌川広重らは自身の作品にこの色を使用し人気を博した。
ちなみに、西洋ではプルシアンブルーと名付けられたこの色は、ベルリンで発見されたことから日本では「ベルリンの藍」が訛り略され、ベロ藍と呼ばれるようになったと言われている。
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