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つなぐのは貴族も好む「最高位の色」ふりかけと『源氏物語』の高貴で優美な関係

つなぐのは貴族も好む「最高位の色」ふりかけと『源氏物語』の高貴で優美な関係

文学から食文化まで…。“紫”の持つイメージの豊潤さ

ところでそんな紫色は、日本人にとってはただの「高貴」「優美」という外面的なものにとどまりません。それはもっと情緒的・文学的な方面においても、豊かなイメージを生み出しています。

たとえば、紫を高貴な色として憧れる感覚――手の届かないものに想いを寄せる感覚――は、日本では「なつかしさ」の観念にも結び付いていきました。

また、古今和歌集には、こんな歌があります。

紫のひともとゆへに むさし野の草はみながらあはれとぞみる

これは、一本の紫草に対する愛おしさゆえに、武蔵野に生えている全ての草が愛おしい……という慕情を歌ったもの。もちろん紫草はひとつの比喩で、これは一人の人を愛するがゆえに、その人に縁(ゆかり)のある全ての人が愛おしく思えてくるという意味です。

この歌は「詠み人知らず」とされていますが、ここから、紫色=縁(ゆかり)というイメージが生まれたとされています。

有名な、三島食品のふりかけ「ゆかり」も、この歌が元ネタだそうです。

もともと、先述した紫草の根には、和紙に包んでおくと色が移るという性質があります。そのへんからも、紫色は、「想い人を自分の色に染めたい」という慕情とも結びつくようになりました。あるいはこうしたイメージが先にあったからこそ、先の歌も詠まれたのかも知れません。

高貴さ、憧れ、恋愛感情、懐かしさ、慕情……。紫色は、平安時代の『源氏物語』と、ふりかけまでをも橋渡しするほどの豊潤なイメージを含んだ色だったのです。

参考資料

 

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