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大河ドラマ「麒麟がくる」で物議をかもした女性たちの「立て膝座り」って実際どうだったの?

大河ドラマ「麒麟がくる」で物議をかもした女性たちの「立て膝座り」って実際どうだったの?

みんな自由に座っていた、大らかな時代

時に、こうした事例をもって「戦国時代、高貴な女性は片膝を立てて座るのがスタンダードだったのだ」とする意見にふれることもありますが、それは流石にいかがなものかと思います。

先ほど言った通り、仕草や立ち居振る舞いに関するマナーが確立されていない戦国時代にあって、人々に座り方をあれこれと指図する基準はありません(少なくとも明文化はされていません)。

もちろん、家庭で親が躾けたり、インフルエンサー的存在がいれば、その所作が流行ったりすることはあったでしょうが、基本みんな自由に(あるいは周囲の空気を読みながら)座っていた筈なのです。

正座にしたい気分もあれば、胡坐の方がいい感じな時もあって、そんな中のいち選択肢として「立て膝座り」もあった、というのが実際のところではないのでしょうか。

近ごろは、声の大きなインフルエンサーに右ならえで「知らないの?おっくれてるー!」「こんなの歴史通の間では常識!」などと得意げな言説も散見されますが、だったらなぜ昔から主張しなかったのか、こういう賢しらな「後出しジャンケン」な態度はどうかと思います。

【戦国時代における女性の座り方・まとめ】

一、立て膝座りは、別にOKだった
一、でも、改まった場面では胡坐なり正座で臨んだものと推測される
一、なぜなら、立膝座りはリラックスしたい時の座り方だから
一、立て膝座りだと深くお辞儀はできないし、長時間姿勢を正すのは非常に苦痛
⇒だからしょっちゅうポジションを変えたくなり、落ち着きがなくカッコ悪い
一、そもそもマナーが確立されておらず、みんな状況に応じて座り方を選んでいたはず
⇒TPO無関係に立て膝座り、というのは流石に不自然すぎる

ともあれ、戦国時代の女性たちが状況に応じて自由な座り方をしていたように、現代の私たちも様々な歴史解釈を大らかに楽しむのが、時代劇との上手な付き合い方(距離感)ではないでしょうか。

※参考文献:
矢田部英正『日本人の坐り方』集英社新書、2011年2月

 

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