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もうカタギに戻れない…殺人を犯した明治時代の美人芸妓・花井お梅の末路【下編】

もうカタギに戻れない…殺人を犯した明治時代の美人芸妓・花井お梅の末路【下編】:2ページ目

カタギに戻れず、自分の殺人経験を切り売りした晩年

出所後はカタギになろうと汁粉屋や洋食屋、小間物(こまもの)屋などを開きますが、店に来るのは「美人芸妓の成れの果て」を見に来る野次馬ばかりで、どの商売も長続きしません。

「何だい、人が反省して真面目に生きようとしているのに、どいつもこいつも……!」

いよいよ食うに困ったムメは、思い切って自分の殺人経験を題材に脚本を書き、明治38年(1905年)から芝居の旅回りを始めます。

「あぁ……やっちまった……」

何せ殺人を犯した当事者の経験ですから生々しいことこの上なく、芝居興行はゴシップ趣味を満たしたいお客で大盛況。十年以上も各地で好評を博しました。

(いくら食うためとは言え、自分のトラウマであったろう殺人経験を自分で上演する心理状態は、決して尋常ではなかったはずです)

しかし40歳を過ぎて旅から旅の暮らしはこたえたようで、54歳となった大正5年(1916年)、古巣の新橋へ戻って芸妓に拾ってもらいますが、その年の暮れに肺炎で亡くなります。

最後の源氏名は秀之助(ひでのすけ)、かつて惚れ込んだ源之助への未練が込められているのでしょうか。

※参考文献:
朝倉喬司『毒婦伝 高橋お伝、花井お梅、阿部定』中央公論新社、2013年12月
紀田順一郎『幕末明治風俗逸話事典』東京堂出版、1993年5月

 

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