人を喰らう巨大な骸骨!妖怪「がしゃどくろ」は奇想の絵師・歌川国芳が生みの親だった【後編】:2ページ目
数百の骸骨たちを一体の巨大な骸骨にした歌川国芳
歌川国芳(うたがわくによし)は、江戸時代末期の浮世絵師です。
江戸時代には名だたる有名な浮世絵師がたくさんいますが、なんといっても歌川国芳の特徴は、斬新で奇抜な発想力やデザイン力でしょう。
日本美術史上の「奇想の絵師」ともいわれ大胆でユーモラスなその作品は現在でも多くの人に愛されています。
12歳から浮世絵を始めたものの、ようやくその才能が認められたのは30歳を過ぎた頃。
中国の「水滸伝」を題材にした極彩色の作品が大ヒントして世の中にその名が広まったのです。
そんな歌川国芳の中でも有名なのが、巨大な骸骨が登場する『相馬の古内裏』でしょう。
この浮世絵の左側に登場しているのは、平将門の娘といわれている伝説上の妖術使い「滝夜叉姫(たきやしゃひめ)」。
そして中央で戦っているのは姫の忠臣(弟ともいわれる)・荒井丸。荒井丸をねじふせているのが源頼信の家臣・大宅太郎光圀という迫力のある構図になっています。
相馬の古内裏とは、下総相馬にあった将門の政庁の廃屋のことで、父の遺志を継いで謀反を企てようと滝夜叉姫が妖術を使って味方を集めた場所のことです。
象徴的なのは、戦っている背後から身を乗り出すように覗き込んでいる、巨大な髑髏の姿。
江戸時代に山東京伝による読本『善知安方忠義伝』(うとうやすかたちゅうぎでん)を題材にした作品なのですが、読本では数百の骸骨が戦闘を繰り広げることになっています。
それを、歌川国芳は家屋の中の御簾を引きちぎるほど巨大な一体の髑髏として登場させたのです。
当時の江戸っ子たちはこの迫力満点の髑髏にさぞかし驚いたのではないでしょうか。