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大河ドラマ「どうする家康」史実をもとにライター角田晶生が振り返る 【賛否両論】大河ドラマ『どうする家康』を振り返り見えてきた3つの「どうする」まとめ

【賛否両論】大河ドラマ『どうする家康』を振り返り見えてきた3つの「どうする」まとめ:3ページ目

どうする武士たち

今年一年間「どうする家康」を楽しませていただきましたが、本作の戦国時代には武士がいなかったように思います。

少なくとも、生きるために殺し合い、乱世を耐え抜く緊張感は伝わりませんでした。

「自分が最後に勝つ結果が分かっているから、それらしくしていれば天下が転がり込んでくるとタカをくくっている」とでも言うのでしょうか。全体を通して武士が武士らしくない。

隙あらば主人(現代なら先輩や上司)の寝首を搔き切って、立身出世を果たしてやろうというギラギラした野心が見えないのです。

いやいや三河武士は忠義に篤いから寝首なんてそんな……と言うのであれば、それなら主君のために生命を捨てる覚悟が伝わって来ません。

先ほども少し触れたとおり、武士とはただチョンマゲを結って鎧兜に身を包み、刀や槍を振り回していれば事足りるものではないのです。

現代の価値観からみればとんでもなく野蛮に見えるかも知れませんが、殺し合うからこそ生命というものと真摯に向き合い、後世「武士道」と呼ばれる独特な美学や精神を育んできました。

時代劇とコスプレの最たる違いは、この矜恃を伝える立ち居振る舞いにあるのではないでしょうか。

たとえ戦場でなくても、常に誰かと殺し合うことになるかも知れない緊張感。それなくして武士を装ったところで、結果は推して知るべしというもの。

大切なもののために命を賭け、侮辱には毅然として立ち向かう。そんな精神を伝える縁(よすが)としての大河ドラマに、今後とも期待したいところです。

終わりに・光る君へどうする!

以上、NHK大河ドラマ「どうする家康」を一年間視聴してきた感想をまとめてきました。一年間にわたって毎週のお付き合い、まことにありがとうございます。

来る令和6年(2024年)NHK大河ドラマ「光る君へ」は、紫式部と藤原道長を主人公とした平安貴族たちの王朝絵巻。合戦場面はないでしょうが、戦うばかりが歴史の楽しみではありません。

やんごとなき貴族たちが織り成す雅やかな文化や有職故実(ゆうそくこじつ。儀式や慣習)、地べたを這いずるように生きている庶民たちの営みを、活き活きと描いてくれるのを楽しみにしています。

これからも大河ドラマが、日本人の物語をつむぎ、その誇りを次世代へ伝える縁(よすが)であり続けることを願ってやみません。

【完】

トップ画像: NHK大河ドラマ「どうする家康」公式サイトより

 

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