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大河ドラマ「どうする家康」史実をもとにライター角田晶生が振り返る 大河ドラマ「どうする家康」では割愛(涙)武田信玄と徳川家康の小競り合いは既に始まっていた

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本気で仕留める?山県昌景の大軍襲来

……兼て信玄入道盟約のことなれば。この五月御領境を御巡視あるべしとて。五六百人の少勢にて御出馬ありしをみて。入道が家士山縣三郎兵衛昌景といへるもの行すぎがてに御供人といさかひし出し。それをたよりに御道をさへぎり留むとす。御勢いかにもすくなきが故いそぎ引退かんとしたまふ。山縣勝に乗じ是を追討せんとひしめく所に。御供の中より本多平八郎忠勝一番に小返しゝて。追くる敵を突くづす。榊原小平太康政。大須賀五郎左衛門康高等追々に返し来りて突戦すれば。山縣も終に勝がたくやおもひけむ。早々駿州へ迯入りたり……

※『東照宮御実紀』巻二 永禄十二年「信玄背約」

一度は撃退されてしまったものの、これしきで諦める信玄ではありません。

永禄12年(1269年)5月に国境を視察に出た家康一行。もちろん、攻め込まれる隙を発見し、武田対策を強化するためです。

「殿、あちらに」
促されて見れば、山県昌景(演:橋本さとし)の大軍がこちらを狙っていました。対するこちらは5〜600騎、まともに戦えば勝ち目はありません。

「すぐに引き返しましょう」

「いや、ここはまだ我らが領内。背中を見せれば武田の領有を認めるも同じ。距離をとりつつ我が領内のギリギリを通って戻ろう」

「御意」

最大限の警戒をしながら、じわじわと領界ギリギリを通過する家康。しかし次の瞬間。

「かかれー!」

怒涛の如く迫り来る山県勢。領界を侵した瞬間、家康は退却を命じました。

「退け、退け!」

一目散に逃げる家康たち。しかし山県勢はたちまち彼らを包囲していきます。

「このままでは逃げ切れぬ!」

「どうせ死ぬなら、三河武士の意地を見せてくりょうぞ!」

馬首を返したのは本多平八郎忠勝(演:山田裕貴)。まさに死に物狂いの大暴れで、山県勢もたじろぎました。

「平八郎を死なせるな、我らも続くぞ、いざ参れ!」

榊原小平太康政(演:杉野遥亮)や大須賀康高(おおすか やすたか)らも続いて山県勢へ殴り込み、当たるを幸い暴れ回ります。

「……兵を無駄死にさせるな、退け!」

完全に気を呑まれつつあった将兵を察して、山県昌景は兵を引き揚げました。

数で勝っていても、あと一歩で家康を討てそうでも、無理な力攻めは損害が大きい。潔い引き際の見極めは、さすが信玄の腹心と言ったところでしょう。

そのまま駿河へ入るのを見届けて、家康たちも引き揚げたという事です。

終わりに

以上、江戸幕府の公式記録『徳川実紀(東照宮御実紀)』による徳川・武田の小競り合いを紹介してきました。

これだけ見たら「信玄ひどい約束破り!」と思いそうですが、家康も氏真のために武田の占領していた駿府城を攻めとるなどしており、どちらも乱世の習いでしょうか。

NHK大河ドラマ「どうする家康」では、完全にすっ飛ばされてしまった大いなる小競り合い。

他にも対武田戦のエピソードは沢山ある(と思う)ので、今後の放送も楽しみですね!

※参考文献:

  • 『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション

トップ画像: NHK大河ドラマ「どうする家康」公式ページより

 

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