「鎌倉殿の13人」ついに比企一族の滅亡。頼家が目を覚ますと…第31回放送「諦めの悪い男」振り返り:5ページ目
比企能員の後悔
さて、先手を打って敵を滅ぼす……そんな頼朝のやり方を踏襲する義時は、能員との最後の交渉を父・時政に依頼します。
時政と久しぶりに語り合った能員は、かつて頼朝の挙兵にすぐさま馳せ参じていれば、石橋山の合戦に敗れることもなかったと後悔を洩らしました。
それが翌日の伏線となるのですが、単身かつ丸腰で名越の北条館へノコノコ出向く能員。待ち構えていたのは、鎧姿の時政。
「待っていたぞ、能員」
この「能員」という諱での呼び方は、時代考証的に違和感はあるものの、例えば藤四郎(能員の通称)と呼ぶよりも改まったよそよそしさや凄みが引き立っていました。
丸腰の者を討てば坂東武者の名折れ……だから手を出せまいと高をくくっていた能員に、時政は言い放ちます。
「お前さんは坂東生まれじゃねえから分からねえだろうが……坂東武者ってのはな、勝ためには何でもするんだ。名前に傷がつくぐれえ屁でもねえさ」
進退窮まった能員は、事前に根回ししておいたはずの三浦義村にも裏切られて万事休す。
「三浦を見くびってもらっちゃ困るな。北条とは二代にわたって刎頸の交わりよ」
この刎頸(ふんけい)の交わりとは「相手のためなら、首(頸)をは(刎)ねられても後悔しない」と思える交わり=親友を表す故事成語。
二代とは亡き父・三浦義澄(演:佐藤B作)と時政の代からとのこと。この義村のセリフ、後に和田合戦(建暦3・1213年)で三浦一族の長老である従兄の義盛を裏切って北条に味方する時の伏線になりそうです。
果たして忠常に斬られた能員。しかし中に鎧を着込んでいたため、何だか手ごたえがありません。高岸さんの「ん、あれ?」という表情が絶妙でしたね。
思えば以前、千葉介常胤(演:岡本信人)たちが謀叛を起こそうとしていた時、比企能員が中に鎧を着込んでいたことがありました。
当時は「これが後に鎧を着込まずに斬られたことの伏線になるのか」と思っていたら、ここでも着込んでいたのです。
「その思いきりの悪さがわしらの命運を分けたんじゃ。北条は挙兵に加わり、比企は二の足を踏んだ」
堂々と丸腰で臨むなら、中途半端な保険など打つんじゃない。言い放つ時政に、能員は呪いの言葉を吐きつけます。
「北条は策を選ばぬだけのこと。そのおぞましい悪名は永劫消えまいぞ」
「……殺(や)れ」
後悔すべきは最期の油断。義時の命によって忠常が止めを刺し、ここに比企能員は果てたのでした。