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燃え盛る炎の中で…北条義時の義兄弟・伊賀光季の壮絶な最期・後編【鎌倉殿の13人】

燃え盛る炎の中で…北条義時の義兄弟・伊賀光季の壮絶な最期・後編【鎌倉殿の13人】:3ページ目

燃え盛る炎の中で、壮絶な最期を遂げる

さて、そんな具合で獅子奮迅の大立ち回りを演じていた伊賀勢ですが、いかんせん多勢に無勢。火をかけられて炎上する館の中、生き残った郎党は贄田三郎と贄田四郎だけになってしまいました。

「最早これまで。最後のご奉公として、死出の旅路を先導仕る」

贄田三郎は血に錆びた太刀の鋩(きっさき。切先)を口に含んで一気に押し込み、鍔元まで呑み込んで自害します。

「後は矢の続く限り、それがしがお守り申す。早うご最期を!」

贄田四郎が残った矢を射放って敵を防いでいますが、あまり猶予は残されていません。光季は、光綱を招きました。

「さて、四郎が時を稼いでくれている間に自刃いたそう。覚悟はよいか」

「自刃とは、どのように致すものでしょうか」

「難しいことはない。腹を切ればよいのじゃ」

そこで光綱は腹巻の紐を切って(再び着ることはないのでほどく必要はない)脱ぎ置き、直垂も緩めて赤木の脇差を握ったものの、なかなか覚悟ができません。

「……まぁ、怖いよな。無理もない。では火の中へ飛び込むといい。腹を切るよりは怖くなかろう」

「……はい」

今度は火の中へ飛び込もうとした光綱ですが、脊髄反射でどうしても身体が逃げてしまいます。そりゃそうですよね。

「よし、分かった。寿王、こちらへ戻っておいで」

いくら武士の子とは言っても、少し無理をさせ過ぎたかも知れない。光季は光綱、いや寿王を傍らに座らせ、我が子の顔を見つめながら言いました。

「親子は前世で契り合った縁というが、そなたほど絆の深い子はまたといるまい。できることなら生き延びて、幸せになって欲しいと願うところだが、父の供をしたいと言ってくれた思いを尊重したい。これは生きてするどんな親孝行にもまさるもの、親子一緒に死出の旅路を行けるなんて、これ以上の喜びはない

そう言って暫く抱擁を交わしたあと、光季は寿王の首を掻き切って殺し、その亡骸を火中へと放り込んだのでした。

かくして最愛の我が子を手にかけた光季は、東を向いて三度拝礼。

「南無帰命頂礼鎌倉八幡大菩薩若宮三所(なむきみょうちょうらいかまくらはちまんだいぼさつわかみやさんしょ。意:鎌倉の若宮=鶴岡八幡宮におわす八幡大菩薩と三柱の神々の足元にひれ伏し、誠の心を申し上げる意)。この身命を擲って、権大夫(義兄弟・北条義時)が武運長久を祈願し奉る」

続いて西を向いて三度拝礼、今度は阿弥陀如来に祈ります。

「南無西方極楽教主阿弥陀如来(なむせいほうごくらくきょうしゅあみだにょらい。意:西方はるか彼方にある極楽の主たる阿弥陀さま)。生きとし生けるすべての魂を救われるあなたの願いが確かであるなら、どうか我らを迎え給え」

光季は念仏を三十度にわたって繰り返してから腹を掻っ捌き、先ほど投げ込んだ寿王の亡骸の上に覆いかぶさりました。

「死出の旅路の殿(しんがり)は、それがしこそが仕る!」

光季父子の最期を確認した贄田四郎は矢も尽きたので抵抗をやめ、これまた腹を掻き切って光季父子の上に重なったということです。

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