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燃え盛る炎の中で…北条義時の義兄弟・伊賀光季の壮絶な最期・後編【鎌倉殿の13人】

燃え盛る炎の中で…北条義時の義兄弟・伊賀光季の壮絶な最期・後編【鎌倉殿の13人】

烏帽子親・佐々木高重に矢を「お返し」する光綱

「何チンタラやってるんだ、いい加減にしろ!こんなに数がいるんだから、正門をぶち抜いてなだれ込め!」

敵方からこんな罵声を聞いた光季は、力押しに破られるくらいなら、いっそこっちから開けてやれと治部次郎(じぶ じろう)に命じます。

「バカめ、向こうから開けてくれたぞ!」

大門が開かれると、朝廷方は我先にと館の中へ乱入しました。

「我こそは間野左衛門尉時連、いざ尋常に勝負せぇ!」

黒革縅の鎧に白葦毛の馬に跨り、光季の姿を探します。

「どこを見ている。我はここぞ!」

館の奥から現れた光季が矢を射かけると、恐れをなした時連は馬首を返して引き上げました。

「やっと穴から出てきたな、この臆病者め!そなたの悪運もここまでぞ、とっとと観念せぇ!」

やってきたのは三浦胤義。互いに強敵と認め合い、じりじりと距離を詰めていきます。

「何を吐(ぬ)かすかこの戯け。上皇陛下をそそのかして天下を奪わんとするその野心はお見通しじゃ!者ども、この三浦平九郎(胤義)さえ討てば後は雑魚ばかり。一斉に射止めよ!」

光季の号令によって郎党たちが矢を射放ったので、胤義のそばにいた者たちが次々と斃されました。

一方、まだ幼いながら果敢に武勇を奮う寿王改め伊賀光綱。戦いの中、かつて元服に際して烏帽子を被せてくれた、烏帽子親の佐々木弥太郎判官高重の姿を見つけます。

「佐々木殿なら、相手にとって不足はありません。かねて烏帽子親子の契りを交わし、あなたから頂戴した矢をこの通り大切に持っております。しかし此度は父上の最期にお供いたしますゆえ、この矢は『お返し』せねばなりませぬ」

そう言って光綱は重藤の弓に矢をつがえ、力の限りに射放ったところ、高重が着ていた鎧の弦走(つるばしり。大鎧の前面に張った革。弓を射放った時、弦が引っかからないためのもの)に突き立ちました。

さすがに少年の力なので貫通はしていませんが、自分が射られたというのに、高重は光綱の成長ぶりに感激してしまいます。

「寿王よ、まこと立派になったな。ゆくゆくはそなたを婿としたかったが、今となってはそれも叶わぬ。あぁ、この止まらぬ涙は喜びか悲しみか……」

親として、自分を超えようとする子の姿を喜ばぬ者はおりません。今日はもう戦いにならないと引き上げた高重の姿に、多くの武者たちがもらい泣きしてしまったということです。

3ページ目 燃え盛る炎の中で、壮絶な最期を遂げる

 

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