2年ぶりに展示中!北斎の娘・葛飾応為の名作「吉原格子先之図」の魅力【後編】
東京都・原宿という都会のど真ん中にありながら、常設的に浮世絵を楽しむ事ができるという事で、長年愛され続けている美術館、太田記念美術館。現在開催中の展示会は「 開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展 ―歌麿・北斎・応為」(開催期間:2020年1月11日(土)から2月9日(日)まで)です。
今回は、前回に引き続き、目玉作品の1つ、葛飾応為の代表作「吉原格子先之図」の魅力をご紹介します。
2年ぶりに展示中!北斎の娘・葛飾応為の名作「吉原格子先之図」の魅力【前編】
東京都・原宿という都会のど真ん中にありながら、常設的に浮世絵を楽しむ事ができるという事で、長年愛され続けている美術館、太田記念美術館。現在開催中の展示会は「 開館40周年記念 太田記念美術館所…
魅力②光と陰の効果
この「吉原格子先之図」で最も印象深いのはなんといっても光と陰の効果でしょう。
さて、ここで突然問題です。この「吉原格子先之図」の画中には、行灯と提灯がいったいいくつあるでしょう。提灯は簡単です。花魁道中から戻ってきた花魁の背中を照らす円筒状の大きな提灯が1つ。中央手前で禿(かむろ)が手にしている丸提灯が1つ。その左に、遊女と話しこむ客が提げている筒状の提灯が1つ。
一方、行灯の方に目を向けると、店の名前の入った掛け行灯が1つ。ちなみにこの文字からこの妓楼は「いつみ屋」である事が分かります。
もう1つの行灯が、一番分かりやすいようで実は少し見つけづらいのですが、お気付きでしょうか。そうです。客が覗き込む格子状の籬(まがき)の奥に、大きな行灯が1つ、張見世のシンボルのように立っているのです。
以上から、この絵は3つの提灯、2つの行灯が発する光をもとに巧みに陰を描き出し、幻想的な世界を造り上げている事が分かるのです。
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