「鎌倉殿の13人」分裂する北条ファミリー、坂東武者の権力抗争…第26回放送「悲しむ前に」振り返り:2ページ目
「これは、何ですか」頼朝、最期の奇跡
義盛「……ろくな死に方はしねぇと思ってはいたが、馬に振り落とされたらしいぜ。武家の棟梁が情けない」
重忠「寂しいお方です。心の底から嘆き悲しんでいるのは、お身内を除けばごく一握り」
どこまでも嫌われ続けた頼朝の死を嘲る和田義盛(演:横田栄司)と、憐れむ畠山重忠(演:中川大志)。
……冥土の当人たちが聞いたら怒り出しそうなものですが、あくまでお芝居の役柄と我慢していただきましょう。
だいたい現代の私たちだって、例えば筆者が死んでも心から嘆き悲しむのなんて、せいぜい妻や母親がいいところ。他の親族なぞ表向きこそ泣いては見せても、その脳内は忌引きの埋め合わせを考えているに決まっています。
それが悪いと言っているのではなく、しょせん人間そんなものだという話し(何なら筆者だって似たようなもの)です。
さて、話を戻して我らが佐殿。政子や安達盛長(演:野末義弘)を除いて、ほとんど誰も悲しむどころか次の算段に大忙し。
荼毘に付される頼朝に合掌しながら、頭の中は権力抗争の段取り……いつの時代も、跡目争いの泥沼ぶりは変わりませんね。
そんな中だからこそ、心から頼朝を愛していた政子の献身的な姿が美しく映え、視聴者の誰もが頼朝復活の奇跡を願ってしまいます。
臨終出家に際して髻から出て来た観音像。かつて比企尼(演:草笛光子)からもらい、強がって「捨てた」と言って平手打ちを喰らった観音像を、実はずっと大切に持っていたのでした。
観音様のご加護で、政子に見せてくれた最後の奇跡。「これは、何ですか」初めて出会った時と同じ献立、同じセリフ。
政子の喜んだ顔と言ったら。もう誰もが助からないことを分かっていながら「良かったね」と思った次の瞬間、すでに事切れていました。
この上げて落とす演出が実に巧み。心に一瞬の隙をつくってそこへ痛打を叩き込む脚本に、唸らされた視聴者も多いのではないでしょうか。