- No.34「いけしゃあしゃあ」の語源は何?調べた結果をいけしゃあしゃあと紹介します
- No.33最終話【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第33話
- No.32【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第32話
【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第17話
前回の16話はこちら
【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第16話
前回の第15話はこちら[insert_post id=78331]■文政八年 正月(1)その男の背後には花が咲く。国芳は正月になると毎年、そう言われてきた。でも、今年は違う…
■文政八年 正月(2)
ふわり、と宙を舞い、みつは国芳の腕の中に飛び込んだ。国芳はみつの身体の重みを受け、そのまま地面に尻もちをついた。痛ってえと国芳は呻いたが、腕にしっかりみつの身体を抱き止めている。
「あははっ」
傍にいた幼い禿(かむろ)の一人が大声で笑った。
子どもたちの笑顔の輪はたちまち広がり、大きな大輪の花になった。
吉原遊廓に、誰も聞いたことのないような子どもたちの笑い声が響いた。
国芳がみつの肩を掴んだ。
「おみつ、聞いてくれ」
大きな目に強い光を宿し、いつになく真剣に言った。
「確かにわっちゃア下手くそでつまらねえ絵ばかりだし、金もねえし、浮世絵師と呼ぶにゃアあんまりお粗末かもしれねえ。でも、わっちゃあ絶対エ諦めねえ。めえの目に届くまで何度でも何度でも、色でいっぱいの鮮やかな絵、描き続ける」
「うん」
かすかにみつは頷いた。
「もっともっと頭ア捻って、最後の一滴まで絞り出して、めえがびっくり仰天して笑い転げるような、今までにねえ楽しくて面白え絵、たくさん考える」
「うん」
「江戸中に名の轟く立派な絵師に、絶対なってやらア」
「うん」
みつの手にひやりとしたものが触れて、驚いて自分の頬に手をやると、気がつかないうちにぽろぽろと涙がこぼれていた。
国芳はなお、絞り出すように力を込めて言った。
「それでいつか、めえをここからかならず連れ出す」。
みつは一瞬動きを止めて、まん丸な目いっぱいに涙を溜め、そしてまっさらな笑顔で強く頷いた。
「うん・・・・・・!」
もう、誰に何を聞かれていようが構わない。
どんな折檻も仕置きも、国芳がいるのなら何の事はない。
「だから」、
みつの視線と国芳の視線が、深く絡み合って一つになった。
「めえもそれまで、絶対諦めんな!」・・・・・・
バックナンバー
- No.34「いけしゃあしゃあ」の語源は何?調べた結果をいけしゃあしゃあと紹介します
- No.33最終話【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第33話
- No.32【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第32話
- No.31【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第31話
- No.30【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第30話