『べらぼう』最終回、1年間の壮大な黄表紙“蔦重栄華乃夢噺”が完結。チーム蔦重の絆と愛を考察【前編】
「なら死ぬな」
「合点承知」
最期の時が近づいてきた蔦重(横浜流星)の背中に手を回し、歌麿(染谷将太)が笑顔でかけた言葉。
「死ぬな」は、過去、何度も蔦重が歌麿にかけた言葉です。「なら死ぬな」は、固唾を飲んで最終回を見守っていた視聴者全員の気持ちでもあったでしょう。
1年間がかりの壮大な、森下佳子作の黄表紙本『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』が、とうとう最後のページを閉じました。
「べらぼう」瀬川が登場!写楽=斎藤十郎兵衛説 採用、蔦重が遺したもの…最終回の内容を解説
今回は、フィナーレに相応しく、さまざまな過去の人物たちが総結集。
チーム蔦重、地本屋の旦那衆、吉原の亡八たち、 “オタクなかわいさ全開”と評判の松平定信(井上祐貴)、平賀源内とおぼしき人物、瀬川とおぼしき人物。
そして、 “写楽プロジェクト”に名を連ねた斎藤十郎兵衛(生田斗真)や、妻・てい(橋本愛)との会話、蔦重を見詰めながら全力の「屁」の“魂呼ばい”……贅沢な場面が続きましたね。
「べらぼう」は、本屋・クリエーター・編集者たちが造りだす“本”というエンターテイメントの素晴らしさを、200年以上超えた現代に伝えてくれました。
最終回の名残りを惜しみつつ、【前編】では、最後に片が付いた仇討ち・写楽プロジェクト・歌麿との関係や、名実ともに立派な本屋となっていく耕書堂の変化などを中心に考察します。
仇討ちのシメは源内!エレキテルの稲妻
前回、国元に帰る松平定信に依頼された通り、一橋治済(生田斗真)と入れ替わった能役者・斎藤十郎兵衛(生田斗真)に写楽画の差し入れをする蔦重。写楽プロジェクトについて、「顔を真似て描いて写楽画としている」ことを伝えます。
そのとき「護送中に治済が逃亡するも、脳天に稲妻が落ち死亡。傍らには変わった髷の男が佇んでいた」という情報が。一瞬映ったその男、着物も髷も立ち姿も平賀源内(安田顕)そのものでした。
まだ、「傀儡師」への仇討ちは終わっていなかったのです。「命まで取るのはどうも具合が悪い」と、定信や蔦重が延命した仇討ち作戦のトドメを刺したのは、まさかの源内でした。
親友・七つ星の龍(田沼意次/渡辺謙)の仇!これをくらえ!」とばかりに、天からエレキテルで最大の稲妻を落とすとは。「もう源内先生はでてこないのか」と思っていたファンにとっては、胸のすく場面でした。
「治済が亡くなったのなら(蜂須賀の家に)戻っては?」という蔦重に、「出て行ったとて、戻るところもないからな」と十郎兵衛。
「私など、いてもいなくても、さして変わらぬものであった」という十郎兵衛の言葉に目を伏せる家臣に気を遣ったのか「けれどこの暮らしも悪くない。うまいものを食べて遊んでいればいい。夢のような…」と言いつつ画を描き続けますが、表情は寂しげです。
蔦重は、この表情を見て「十郎兵衛を写楽プロジェクトの一員に加えよう」と思ったのではないでしょうか。色恋感情には鈍い人でしたが、こういうところは敏感で「どうにかしなきゃ!」と動くところがありましたよね。



