『ブラッサム』ある悲劇から出家、栄光の直木賞を受賞!宇野千代の恋人だった左良太のモデル・今東光の生涯
朝ドラ「ブラッサム」には、魅力的な人物が数多く登場します。ヒロイン・葉野珠と出会う青年・左良太もその一人です。
そのモデルが実在した小説家の・今東光(こん・とうこう)でした。
今東光は、若き日に燕楽軒で働く宇野千代とであって親しく交流。川端康成や芥川龍之介らと同じ時代を文学者として生きています。
やがて東光は小説家から僧侶へ転身。直木賞を受賞しただけでなく、寺院の住職や参議院議員まで務めました。
東光はなぜ、僧侶となったのか。なぜ議員として活動するようになったのか。
今東光の生涯についてみていきましょう。
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横浜に生まれた今東光、東京・本郷で宇野千代と出会う
明治31(1898)年3月26日、今東光は日本郵船の船長・今武平と綾の子として神奈川県横浜市伊勢町で生を受けました。弟にはのちに小説家となった今日出海(こん・ひでみ)がいます。
明治になってこそ雇われの身の父・武平でしたが、もとを辿れば父方は旧津軽藩士で山奉行の家系という歴とした武士の家柄でした。
武平の仕事は転勤が多く、一家は函館や小樽、横浜、大阪と転居を重ねます。
10歳頃には神戸で育ち、ここで谷崎潤一郎などの作品を愛読。文学との出会いを果たしています。
明治45(1912)年、東光は兵庫県の関西学院中学部に入学。しかしここで平田という牧師の娘と恋愛関係となります。
当時の異性間の交際は問題視されており(朝ドラ「ブラッサム」でも描かれていますね)、大問題となりました。大正4(1915)年、これがもとで東光は退学しています。
さらに行動派である東光は、驚くべき行動に出ていました。
交際相手の父は内村鑑三(日露戦争に反対)と親しく交流。そのため日露戦争推進派から自宅に石を投げ込まれるなどの被害を受けていました。
交際相手の自宅が投石されるのを目の当たりにした東光は、民衆に対して放水。今度は自分の家が投石される目に遭います。
程なくして、東光は兵庫県立豊岡中学校にも転入。しかしここででも文学少女と恋愛したことで退学処分となりました。
以降、東光は独学で学び始めます。
その後、東光は画家を志して東京の伯父の家へ寄宿。画塾に通いながら、文学や美術に関心を深めていきます。
大正6(1917)年には、画家の関根正二を通じて東郷青児と知り合い、さらに佐藤春夫、谷崎潤一郎らとも交流するようになります。
翌大正7(1918)年には、川端康成と出会い、人脈形成を強めていきました。
そしてこの頃、東光はのちに人気作家となる宇野千代とも出会います。
大正6(1917)年ごろ、千代は生活費を得るため、東京・本郷三丁目の西洋料理店「燕楽軒(えんらくけん)」で働いていました。
「燕楽軒」に関しては下記記事で取り上げています。ぜひご覧ください。
『ブラッサム』珠が働く「悠楽軒」は本当にあった!わずか18日のバイトで芥川龍之介らと交差した運命の場所
この店には『中央公論』の編集者である瀧田樗陰をはじめ、文学関係者が出入りしていたといいます。
二人は燕楽軒での出会いをきっかけに親しくなっていき、やがて本郷の町を一緒に散歩するようになりました。
なお千代は『わたしの宇野千代』において、若いころの東光を恋人だったと振り返っています(このとき、千代はのちに夫となる藤村忠と同棲中です…)。
「ブラッサム」に登場している木村保のモデルである藤村忠の生涯に関しては、下記記事をご覧ください。
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東光と千代の交際は、一つの文学作品にもつながりました。
ある日、千代が東光と街を歩いていたところ、八百屋で安い葱を見つけて購入。東光はそのエピソードを芥川龍之介に話します。
大正9(1920)年、芥川はこの話を元にして短編小説『葱』を創作。同年1月の『新小説』に掲載されています。
もちろん、作品に登場する言動全てが、2人の全てを表す物ではありません。
大正10(1921)年、東光は川端康成らとともに文芸同人誌『新思潮』の第六次に参加。
大正12(1923)年には菊池寛らと『文藝春秋』の創刊に関与。大正13(1924)年には川端康成、横光利一らと『文藝時代』の創刊に参加しました。
ここから、従来とは異なる感覚的な表現を追求する「新感覚派」の文学運動が広がりました。
大正14(1925)年、東光は創作集『痩せた花嫁』を刊行。しかし、菊池寛らとの対立もあり、東光は新感覚派を離れていきます。
若くして文壇に登場した東光でしたが、その進路はやがて大きく変わることになります。
2ページ目 親友・芥川龍之介の死を機に出家へ…どん底から掴んだ「直木賞」



