『べらぼう』招かれざる客は”蔦重の子供”…唯一無二の存在ではなくなった歌麿の決別【後編】:2ページ目
西村屋が放つ「熱」と「猜疑心」に心揺れる
もやもやした思いを抱きつつも歌麿は、弟子に「自分の作品に似せて絵を描くよう」に申し渡します。お弟子さん「光栄です」と嬉しそうでしたね。
その表情を見て歌麿も、北尾重政(橋本淳)が言っていた「そのほうがあいつら(弟子たち)も喜ぶしな」という言葉が頭に蘇った……そんな感じの表情を浮かべてました。
重政先生のように、自分のこだわりを捨てて蔦重の話に乗ろうと決めたのかもしれません。けれども、そんな時、西村屋(西村まさ彦)が二代目として養子にした鱗形屋の息子万次郎(中村莟玉)を連れて訪れます。
以前、第七話『好機到来「籬の花」』のとき、まだ子供だった万次郎が登場していたのは覚えていますか。
お上に逮捕されてしまった鱗形屋。西村屋は「鱗形屋に代わり『吉原再見』を出す」という蔦重を邪魔するため、鱗形屋を訪れ妻子の前で細見の板木を売るように迫り、目の前に金をどんどん積み上げました。
そのとき、西村屋に対し「おとっつぁんでないと決められませんから」と、きっぱり断ったのが万次郎でした。「ん?」と驚く西村屋。万次郎の聡明さに、何かを見出したようにもみえました。だから養子に迎えたのだと思います。
歌麿に「絵を描いて欲しい」と頼む西村屋。蔦重との関係があるので受けられないと断る歌麿に、「歌麿の絵の大ファン」だという万次郎が、自分のアイデアを書き溜めた紙を差し出します。
そこには、火消しや鳶職などの江戸の「イケメン」を集めた画集、カラーでは当たり前なのであえて墨だけにした錦絵など、おもしろいアイデアが。歌麿も「これはおもしろい」と思ったようです。
確かに、錦絵は女性ばかりなので、イケメン大特集は売れそうですね。江戸では「男色」も流行っていたそうですし……。
歌麿は、万次郎の「蔦重のところだけでは、画風が狭まってしまうのでは」という言葉と、西村屋の「本来なら、蔦重の紋よりも歌麿先生の名前のほうが上に配置さえるべき。長い付き合いをいいことに、都合よく扱われてるとこもあんじゃございませんかね。」という猜疑心を植え付けるような言葉に影響を受けたようです。
このへんは、ずっと蔦重を恨んでいる西村屋らしい言葉でしたね。
歌麿は「今の自分があるのは蔦重のおかげ」と断ったものの、動揺している様子が見て取れました。
