なぜ日本人は自然に“並ぶ”のか?行列は国民性?歴史から読み解く「順番」を大事にする理由
駅のホームで、足元の線に合わせて人がすっと並ぶ。改札前でも、人気の店でも、「最後尾はこちら」を見て自然に列ができる。
こういう場面って、日本だと珍しくないですよね。
ただ、「日本人は真面目だから」で片づけると、なんだか物足りない。行列って、性格というより、長い間の暮らしの中で「そうしたほうが都合がよかった」から残ってきた面が大きいんです。
順番を大事にする理由を、歴史の流れに沿って見ていきます。
田んぼの暮らしは、水をめぐって揉めやすい
昔の農村は、水田稲作が中心でした。田んぼは水が命。でも水は、上流から下流に流れます。すると、放っておくとどうなるか。上流が多めに取ったら、下流は足りない。下流が勝手にせき止めたら、上流も困る。
つまり、水は「早い者勝ち」にすると、すぐ揉めます。
だから村や水利組合の単位で、「どこがいつ水を使うか」「用水路の掃除は誰がやるか」みたいなことを決めて、当番制で回してきました。これはきれいごとじゃなくて、生活のためのルールです。
順番を決めるのは、人の心が優しいからというより、「決めないと村が回らない」からだった、という感じです。
人が密集する町では、秩序がないと危ない
江戸時代になると、江戸・大坂・京都などの都市に人が集まり、特に江戸はとても大きな町になりました。人が増えると、見知らぬ人同士が同じ場所でぶつかりやすくなります。しかも当時は火事も多い。混乱すると危ない。
そんな環境だと、「ここはこう動こう」「こうしたほうが安全だよね」という作法が必要になります。通りをどう歩くか、祭りのときどう動くか、みんなが使う場所をどう扱うか。
こういう“町の暮らし方”の中で、順番や秩序を守る感覚が育っていったと考えられます。
2ページ目 鉄道と学校が「並ぶ」を日常にした
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