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「鎌倉殿の13人」やってくれましたね、最後の最期で…第30回放送「全成の確率」振り返り

「鎌倉殿の13人」やってくれましたね、最後の最期で…第30回放送「全成の確率」振り返り

雨降って何とやら…実衣と政子の仲直り

頼朝の後継者問題よりこのかた、何かと疎遠であった政子と実衣。しかし全成の逮捕によって切羽詰まった状況ともなれば、助けずにはいられない政子。

気まずい実衣ですが、他愛ないやりとりを通して仲直りした二人。よかったよかった……しかしそこへやってきたのは、比企弥四郎(演:成田瑛基)ら頼家の側近たち。

「実衣殿を引き渡せ!」

北条泰時(演:坂口健太郎)が必死に止めても、政子が制止しても聞く耳を持ちません。

「仕方ありませんね……お願いします」

政子が奥の扉を開けると、そこには完全武装の仁田忠常(演:高岸宏行)。

「(政子に対し、満面の笑みで)後はお任せ下さい……(弥四郎らに向き直り、真顔で)来るなら、来い!」

右手に太刀、左手に長刀(長巻?)の二刀流で一喝する姿は実に頼もしく、若い側近らは恐れをなして引き下がっていきました。

「来い!」

忠常の後ろで太刀を構える泰時も、とても可愛かったですね。

ちなみに、『吾妻鏡』だと政子が単独で比企弥四郎を撃退。曰く「全成殿は阿野荘に戻っており、2月ごろからこの3か月ずっと連絡もとっていない。謀叛の企みなど知るはずもない」と拒否しています。

この記述から、作品によっては北条氏が全成をトカゲのしっぽ切りすることも少なくないため、今回は実にハートフルな(だからこそ悲惨さが際立つ)展開となりました。

所領の再分配について

「そうだ。そなたの持っておる上野国(現:群馬県)の所領をすべて差し出せ……宿老が自ら手本を示すのだ。忠義を誓うなら、できるだろう」

そう能員に迫った頼家。かつて亡き頼朝が御家人たちの横一線化を図ったように、所領の多い者から少ない(あるいは持っていない)者への再配分を打ち出しました。

これが能員をして全成に再度の呪詛をそそのかす原因となったのはさておき、頼家が御家人たちの所領を再分配しようと図ったことは『吾妻鏡』に記述があります。

金吾仰政所。被召出諸國田文等。令源性算勘之。治承養和以後新恩之地。毎人。於過五百町者。召放其餘剩。可賜無足近仕等之由。日來内々及御沙汰。昨日可令施行之旨被仰下廣元朝臣。已珍事也。人之愁。世之謗。何事如之哉之趣。彼朝臣以下宿老殊周章。今日如善信頻盡諷詞之間。憖以被閣之。明春可有御沙汰云々。

※『吾妻鏡』正治2年(1200年)12月28日条

【意訳】頼家(金吾)は政所に命じて諸国の田文(でんもん。田んぼの権利証書)を取り集めさせ、源性(げんしょう)にこれを集計させました。頼朝の挙兵以降に与えた恩賞の土地について、500町(約5ヘクタール)を超えて所領を持っている者は、超過分を召し上げるとのこと。召し上げた土地は所領を持たない側近らに与えたいそうで、かねがね考えていたことをただちに実行するよう大江広元(演:栗原英雄)に命じました。
いやいやちょっと待って下さい。いくら何でもあんまりです。だってかつて頼朝に命を預けて戦い、少なからぬ犠牲の代償として得た所領を召し上げるなんて、そんなことをしたら二度と誰も従ってくれなくなってしまいます。
善信入道(三善康信。演:小林隆)らが必死になって諫めたので、頼家も仕方なく一度は取り下げてくれました。が「来春には決定するからな!」と言い放ったそうな。

大河ドラマの第30回放送は(全成が逮捕され、殺される直前と考えて)建仁3年(1203年)。少し時間が前後しているのか、あるいは正治2年(1200年)から言っていたことを、ここに来て実行しようとしたのかも知れません。

結局この件はうやむやになっているものの、頼家としてはパワーバランスの調整によって政権基盤の安定化を図ろうとしており、かなり乱暴とは言え着想自体は悪くないのではないでしょうか。

もう少し文官や宿老たちと話し合い、より摩擦の少ないうまいやり方があったとは思いますが……まぁ、そんな配慮があるなら、あんな最期は迎えなかったでしょうけど。

6ページ目 義時「立派なご最期でした」実衣「詳しく聞かせて」

 

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