「鎌倉殿の13人」やってくれましたね、最後の最期で…第30回放送「全成の確率」振り返り:6ページ目
義時「立派なご最期でした」実衣「詳しく聞かせて」
さて、いよいよ全成が斬られんとするまさにその時。
のうまくさーまんだーばーさらだんせんだん
まーかろしゃーなーそわたやうんたらたかんまん……
呪文を唱え続けていると空がにわかにかき曇り、打ちつけるような雨が降りしきります。
おんあふるあふるさらさらそわか
おんあふるあふるさらさらそわか……
その霊力に恐れをなす武士たち、日ごろ神仏の祟りなど畏れない八田知家も、わずかに怯みを見せました。
首を落とそうと太刀が振り下ろされた瞬間、近くの樹木に雷が落ちて逸れた太刀筋。縄の切れた全成は、血の赤さに実衣を思って九字を切ります。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前……ぼろん急急如律令、合!」
これは初登場の際に「風を起こす」と張り切ったものの失敗、「今日はダメのようです」とうそぶいていたあのおまじない(九字護身法などとも)。
以来ずっとギャグ要員として活躍?してきた全成ですが、ここで最後の力を振り絞って嵐を起こし、実衣を護るべく念を飛ばします。急急如律令(急げ、急げ、律令の如く=法力を届かせしめよ)……能員に「実衣の身が危ない」と聞かされていた全成の思いが伝わるようです。
政子「やはり全成殿には、人知を超えた力があったのですね」
実衣「当たり前じゃないですか……醍醐寺で20年も修行して来たんですから。私には分かっていました」
前回は、頼全からの書状を読んで「お寺の修行って、大変なんですってね」などと呑気なことを言っていた実衣。修行の大変さなら、全成以上に知っている人はいないでしょう(少なくとも、実衣の身辺では)。
今まで藤原秀衡(演:田中泯)の調伏をはじめ、多くの祈祷や呪詛に失敗してきた全成。それはきっと命令によって渋々やらされていたからであり、ここ一番では(心から本気で願ったならば)しっかり決められる法力を備えていたのです。
果たして夫が贈った最大にして最後の愛情をもって、実衣は天寿をまっとうするのですが、それはまたしばらく後の話し。
本当に愛情深く、また実力を備えた全成の、実に立派な最期でした。
終わりに
さて、全成の死によって抜き差しならぬところまで来てしまった北条と比企の対決。
全成の呪詛が今度こそ効いてしまったのか、急病に倒れる頼家、にわかに沸き起こる後継者問題。選ばれるのは、比企派の一幡(演:相澤壮太)か千幡か(善哉はさすがにまだ幼過ぎるため除外)。
次週放送の第31回「諦めの悪い男」とは比企能員のことを指しているのでしょうか、それとも……いよいよ幕を開ける比企の乱(建仁3・1203年9月2日)、心して見届けたいですね。
※参考文献:
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』NHK出版、2022年6月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 続・完全読本』産経新聞出版、2022年5月