おごれる道長に鉄拳制裁!平安時代、藤原道長を殴り飛ばした女官のエピソード:2ページ目
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「うわっ、そなた一体何を!」
とっさに道長は藤典侍の手を振りほどこうとしましたが、体格も膂力も十分であったにもかかわらず、彼女の手はビクともしません。
もちろん藤典侍が特に筋骨隆々だったということもなく、ごく普通のなよなかで日ごろ大人しい女性でした。
「ぎゃぁ!」
次の瞬間、藤典侍は渾身の力で道長を殴り倒します。
「誰か……誰かある!」
道長や詮子らの悲鳴を聞きつけた人々が、何事かと駆けつけた間も藤典侍は道長を殴り飛ばし、また投げ飛ばしと大暴れ。
いいぞもっとやr……もとい、とんでもない事態に大わらわとなりながらもどうにか藤典侍を取り押さえると、彼女は魂が抜けたように気を失ったのでした。
終わりに
「これはきっと、物の怪(け)に憑かれたに違いあるまい」
殴られた腹いせで女性を処罰するというのは、男性として実にカッコ悪いと思ったのか、けっきょく道長は藤典侍を不問に処したということです。
こうした物の怪に憑かれた女性の暴行被害は道長だけではなく相次いでいたそうで、当時の社会不安や貴族界でのピリピリした空気が影響していたのでしょうか。
「裏でコソコソしてんじゃねぇ、気に入らないなら堂々と殴り合え!」
陰湿な政争や堅苦しい貴族社会に対するストレスが、彼女たちを暴行に走らせたのかも知れませんね。
※参考文献:
- 繁田信一『殴り合う貴族たち』角川ソフィア文庫、2008年11月
- 堀江宏樹ら『乙女の日本史』東京書籍、2009年8月
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