「未知との遭遇」なんていう言葉がありますが、今のようにメディアが発達して世界中の人や情報がほぼリアルタイムで共有することがまだできていなかった時代、海外からの新しい事物の紹介は、驚きと称賛を持って迎えられることが多かったようです。
一方、いままで予備知識がない中で、時には誤訳や誤解で、伝えようとした本人が全く意図していたものではないように解釈されてそれがそのまま伝わってしまって定着した!なんていう事例もときどきあったようです。
有名なのは、カンガルーの名前の由来のエピソードですね。
カンガルーの名前の由来
カンガルーは、オーストラリアを訪れてはじめてみた探検家のクック船長が、地元の先住民にその名前を聞いたところ、現地の言葉で「あなたの言っていることがわからない」とう意味に当たる「カンガルー」が、動物の名前として誤解されたまま世界中に広まってしまったというエピソードが残されています。
ただこの話自体は、噂話だったようで「カンガルー」という名前がカンガルー科に属する動物の一種を指したものであったことがクック船長に同行していた博物学者のバンクス博士によって明らかになっているようです。
実は、「九官鳥」という鳥の名前も、そんな誤解から名付けられたという説があるんです。
九官鳥(きゅうかんちょう)の名前の由来
九官鳥といえば、ムクドリ科の鳥で、東南アジア、インド、中国南部にかけて生息する物まね鳥ですが、中国ではこの鳥を「秦吉了(しんきつりよう)」と呼びます。
この鳥が、日本にもたらされたのは江戸時代頃。九官という人物が日本にもたらしたと伝えられています。
その際、この鳥が人間の言葉を話すという意図を伝えるために、九官は、
「この鳥は自分の名前(九官)をいう。」
と話したのを、そのときに一緒にいた通詞が
「鳥が、鳥自身の名前をいう。」→ 鳥自身の名前は九官である
として誤解して日本人に伝えてしまったために、以後この鳥は、「九官」の名前をとって、九官鳥といわれるようになったのだとか。
また、日本人が、鳥の名前を尋ねたところ、通詞が鳥の飼い主の名前を尋ねたものと勘違いをし、「(鳥の飼い主の名前は)九官です。」と答えてしまい、以後九官鳥と呼ばれるようになった、なんて話も伝えられています。
これらのエピソードは、『本朝通鑑』や『飼籠鳥』などにまとめられており、九官鳥の名前の由来を示すものとして、今も根強く伝わっています。
ただ、実際に九官なんていう人物が実在した人かどうかもはっきりしていませんし、ちょっと疑わしいなと思う部分もあります。
最初にご紹介したカンガルーのエピソードのように、噂として広まった部分もあるのかもしれませんね。
参考
- 田島 一彦、 大橋 弘一『美し、をかし、和名由来の江戸鳥図鑑』
- “カンガルーという名称の由来” RooMeet おいしく燃やす