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迷信?はたまた先人の知恵?日本で大流行したあの疫病と「赤色」の奇妙で不思議な関係

迷信?はたまた先人の知恵?日本で大流行したあの疫病と「赤色」の奇妙で不思議な関係

さて、かつての日本で大流行した疫病の中でも、何よりもこの霊験あらたかな赤色が効くと信じられていたものがあります。

それは「疱瘡(ほうそう)」です。

皆さんは、疱瘡はご存じでしょうか。「天然痘」の呼び名の方がピンとくる方も多いかも知れません。

これは紀元前の時代から知られていた疫病で、感染力が強く致死率も大変高い病気でした。たとえ治癒しても顔面に一生「あばた」が残ったり失明することもあるという恐ろしさで、やっと世界からこの病気が根絶されたのは1980年のことでした。現在でも、日本では指定難病のひとつとされています。

日本で最初の疱瘡が発生したのは天平7年(735年)とされています。その後も中世や、18世紀頃に何度も流行したといいます。

私たちの先祖は、この疱瘡が流行すると、感染を避ける方法や、万が一罹患した場合にどうすれば軽症で済ませられるかについて頭を悩ませていました。

日本では「疱瘡神」に取りつかれることで疱瘡に罹ると信じられていました。この疱瘡神は赤い色をしており、赤を好む神だと思われていたそうです。おそらく、疱瘡による発疹の色からイメージしたのでしょう。

 

このため、子供のおもちゃを赤色にしておくことで疱瘡神の気をそらしたり、万が一罹患した場合は患者を赤い蚊帳の中で寝かせるなどして周囲を赤色で統一し、さらに赤飯に赤い鯛を添えたものを食べさせたりしていたそうです。また看病する者も赤い服を着たりしました。

伊豆半島では源為朝(鎮西八郎)が疱瘡神を退治したため疱瘡が流行しなかったという伝説があり、疱瘡神が寄りつかないよう家の戸口に「鎮西八郎為朝御宿」と朱書した紙を貼ったり、あるいは祟り除けの赤い幣を立てたりしました。

このほか、赤い紙で作った人形や達磨、赤い頭巾や手ぬぐいなどなど、赤色のアイテムが「疱瘡除け」に用いられた話は、全国的にも枚挙にいとまがありません。

以上は民間信仰レベルでの話ですが、さらに村のお祭りなどでのレベルでも、疱瘡除けの赤色はよく用いられました。

3ページ目 あながち馬鹿にできない「赤色による病魔退散」

 

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