奢れる平家に見事リベンジ!以仁王の挙兵で主君の雪辱を果たした渡辺競のエピソード:4ページ目
宗盛の名馬「南鐐」に乗って
さて、いよいよ頼政らの挙兵当日。もちろん競は先陣に名乗り出……たかと思ったら、あろうことか出立の刻限に遅れてしまいました。そればかりでなく、何を血迷ったのか、にっくき宗盛の元へ参陣する始末……いったいどうしてしまったのでしょうか。
もちろん、宗盛は武勇名高き競の加勢を喜んで出迎えます。
「おぉ、競滝口か!頼もしや頼もしや……しかしその方、馬はいかがした?」
競は武士にとって脚とも言うべき馬もなく、徒歩でやって来たのでした。
「は。実はそれがしの愛馬が怪我をしてしまい、なかなか駆けつけられずに困っておりました……そこで不躾なお願いにはございますが、宗盛様の愛馬『南鐐(なんりょう。煖廷とも)』をお貸し頂けませんでしょうか。敵陣に斬り込んで参ります」
南鐐(なんりょう)とは美しく精錬された純銀の別名で、きっと白銀のように美しい毛並みを持っていたのでしょう。
ちなみに作品によっては「何両」という漢字が当てられている事もありますが、こちらも「値段がつけられない=何両出しても買えないほどに素晴らしい馬」という意味になります。
競の申し出を受けて、日頃よりその武勇を知っていた宗盛はそれを快諾。さっそく南鐐を競に貸し与えると、競は颯爽と駆け出して行きました。
競はただ一騎で頼政の陣に駆け込むと、どっと歓声が上がりました……が、剣戟の響きは一切聞こえず、ただ喜びに沸き立っている様子。いったい、どうしたのでしょうか。