『べらぼう』は終わらない!総集編の放送前に心に残った感動の名場面を振り返る【吉原・遊女編】:5ページ目
恋人の無念の死に闇堕ちするも笑顔を取り戻す
第29回「江戸生蔦屋仇討」。愛する人と結ばれる直前。意知が殺され、悲しみ・絶望・憎しみの思いで闇堕ちしていた誰袖は、蔦重のアイデアによるバカ旦那の奮闘記本『江戸生艶気樺焼』でやっと笑顔を取り戻しました。
庭の縁側で蔦重と話ながら、ふと見上げるとなぜか季節外れの桜の花が咲いていました。桜は誰袖と意知を深く結びつけた恋の花。
「許してくだりんすかねえ、雲助様(意知)は。後すら追えぬ情けねえわっちを。」
と、つぶやく誰袖の目の前にひらひらと桜の花びらが舞い落ちて来ました。
「許すっておっしゃってるんじゃないですか」と、誰袖にずっと付き添っていた、しげ。「ああ、そんなお前だからとびきり好きだってな」と蔦重。
きっと、誰袖を見守っていた意知のメッセージでしょう。愛する彼女が後追いして自死することなど望んでいなかったはず。
絶望から喉に刃を突き立て自死することができなかった誰袖。犯人、葬儀に石を投げつける心無い江戸の町の人々を呪って呪って呪って……「人を呪わば穴ふたつ」で、自分のもとに呪いが跳ね返り殺してくれればいいと願っていたのでした。
けれど、笑うことでやっと憑き物が落ちたようになった誰袖。二人を結んだ桜に見守られて、これからは前を向いて生きていくのだろうなと、ほっとする場面でした。
地獄でもがく誰袖を、陽の光があたる現世に連れ戻した……ここでも、蔦重が作る“本”の持つエンターテーメント力に痺れたのでした。
