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『べらぼう』蔦重による「エンタメの奇跡」に”煽りのプロ”がつい見せてしまった怒りの爆発【前編】

『べらぼう』蔦重による「エンタメの奇跡」に”煽りのプロ”がつい見せてしまった怒りの爆発【前編】:3ページ目

またもや“富本節”の力に救われる蔦重だが

「富本節」といえば、第11回『富本、仁義の馬面』で、蔦重を助けてくれた富本節の人気太夫・富本午之助(とみもとうまのすけ/寛一郎)が思い出されます。

大河「べらぼう」蔦屋重三郎の夢を支えた『男気』〜浄瑠璃の馬面太夫と富豪の鳥山検校〜【前編】

「おさらばえ」……美しい膝折礼で最後の別れを告げ、大門を出て行った瀬川花魁(小芝風花)。大河ドラマ「べらぼう」の第10回「『青楼美人』の見る夢は」では、その美しい白無垢姿、俯瞰カメラか…

あの太夫も蔦重を助けるために人肌脱いで、俄まつりを盛り上げてくれました。今回、斎宮太夫もこの役目を快諾。「歌と語りの力」で、民衆の心を惹きつける奇跡を起こしましたね。蔦重は、彼を起用できるだけの友好関係を築いていたのでしょう。

興奮状態が冷めれば、「お金が配られるからそれで米が買えるじゃないか!」と理解でき、民衆の怒りの炎はあっという間に鎮火しました。ところが、自分の「仕事」を蔦重に邪魔された「丈右衛門だった男」は、顔を歪ませます。

今まで、平賀源内を破滅する罠を仕掛け、片棒を担いだ大工を簡単に斬り捨て、佐野政言(矢本悠馬)が田沼意知(宮沢氷魚)に悪意を持つようにデマを吹き込み斬らせ、「佐野大明神」を担ぎ上げ、「役人が犬を食えと言った」と煽動し、皆が「盗みを働くよう」煽り……という凄まじい仕掛けをしては「ニヤリ」と不気味な笑顔を見せていた「丈右衛門だった男」。

アジテート(煽動活動)とアサシネート(暗殺活動)に徹し、手際よくやりとげていたプロが、“初めて見せた感情の爆発”が印象に残りました。

片手に匕首を握りしめ、踊る蔦重を睨みつけながら人混みをかき分けていく「男」。剥き出しの匕首を持っていたら、誰かに止められるか悲鳴が上がり蔦重に気が付かれるだろうに。さらに、民衆の目の前で蔦重を刺したら、あっという間に取り押さえられるだろうし大勢に顔を覚えられるし……黒子だった「男」が、なぜこんなに感情をむき出しにしたのか。

4ページ目 唯一人間らしさを見せた“蔦重への剥き出しの怒り”が破滅に

 

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