『べらぼう』蔦重による「エンタメの奇跡」に”煽りのプロ”がつい見せてしまった怒りの爆発【前編】:2ページ目
蔦重の「エンタメ」が市中に“奇跡”を引き起こした瞬間
奉行所の前で「役人が犬を食えと言った」とデマで煽った男が、常に暗躍する「丈右衛門だった男」だと気がついた蔦重は、田沼意次(渡辺謙)にその事実を伝え「米を配れないなら金を配り、騒動を収めては」と提案をします。
提案にのった意次に、「お上が金を配るという告知のビラ」を依頼されますが、前回「米が配られるビラ」を撒いて結局米は配られなかったので、またビラを刷って撒くのは躊躇してしまところ。今度こそ、「田沼の手先」と思われて、耕書堂まで打ち壊しの目にあってしまってはたまりません。そこで、閃いたのが「エンタメ」の力でした。
一方、市中では「金だ金だ〜!」と盗んだ金をばら撒き、人々に“盗み”を煽る「丈右衛門だった男」が暗躍中。興奮した人々は盗みを始めます。こうなると、「盗みはやめろ」と静止する新之助の声は届きません。さらに、「男」はかけつけた町方に「いつもなら役人に頭を下げるが、もうそうはいかない」と凄んで見せ、自然に暴動のリーダーのポジションになってしまいます。そんな、収拾のつかない無法地帯と化した江戸市中で、人々の耳に突然飛び込んだのが、“音楽・歌声・呼び込み声”でした。
いきなり登場したのは、『お救ひ銀 米に換わり候』ののぼり、笛や大太鼓と次郎兵衛(中村蒼)を乗せた山車、三味線を引く人々、踊る人々、そして先頭を行くのは富本節の斎宮太夫(新浜レオン)という、蔦重エンタメ軍団。兄さんが太鼓を叩き、笛や三味線が奏でる音楽に合わせ、太夫の美声が狂気に走る江戸の街に響きます。
以前、狂歌師の太田南畝(桐谷健太)が、商売の失敗で落ち込む蔦重に「意表を付いたアイデアを実行する、そして周囲が「そう来たか!」と驚く。それが蔦屋重三郎だろう」と励ました言葉を覚えていますか。
今回の蔦重の「そうきたか!」は、まさかの「配給のお金が振舞われる」告知を、ビラを配るだけではなく、エンタメにしてしまうという発想。人々は、このエンタメ軍団に心を奪われ、あっというまに暴動を忘れてました。
