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『べらぼう』蔦重による「エンタメの奇跡」に”煽りのプロ”がつい見せてしまった怒りの爆発【前編】

『べらぼう』蔦重による「エンタメの奇跡」に”煽りのプロ”がつい見せてしまった怒りの爆発【前編】:4ページ目

唯一人間らしさを見せた“蔦重への剥き出しの怒り”が破滅に

もしかしたら、「佐野大明神」を流行らせ「田沼潰し」ムードを盛り上げようとしたのに、蔦重が意知の“仇打ち”で出版した『江戸生艶気樺焼』の大ヒットで潰されたことを恨みに思っていたのかもしれません。そして、今回も完璧な仕事だったはずなのに、蔦重のエンタメ軍団が登場したせいで失敗したのが、プロとしてプライドが傷つき感情が先走ってしまったのでしょう。民衆の前で匕首を振りかざした「男」。

けれども、蔦重を刺す瞬間、新之助が間に入ったために新之助を刺し、長谷川平蔵(中村隼人)の矢で射られ、あっけなく死んでしまいます。ドラマの中の人物とはいえど、この時代の歴史に爪痕を残し、人を不幸に突き落とす仕事を淡々と続けてきた「男」は、最後の最後まで、どこの誰だったのかわからないまま。己が「天になる」という壮大なる野望を抱く陰謀家・一橋治済(生田斗真)のエージェントらしい死に方でした。

まったく人間味が感じられなかった「男」が唯一見せた、蔦重への剥き出しの怒りに、“この男も生身の人間だったのだ、どのような生まれ育ちだったのだろう”と、思わず考えてしまうようなシーンでした。

「人は何のために生きるのか」というテーマが根底に流れているドラマですが、この男も、いったい何のために生まれ何のために生きてきたのか……強烈な印象を残しました。

【後編】では、死にゆく新之助の思いと、絶望の地獄に突き落とされた蔦重、それを救い上げることができた唯一の男・歌麿(染谷将太)……を振り返って考察してみます。

【後編】の記事はこちらから↓

『べらぼう』 ”エンタメの奇跡”で暴動が収束も…新之助の死に苦しむ蔦重を救い出した歌麿【後編】

今まで、一橋治済(生田斗真)の傀儡として、アジテート(煽動活動)とアサシネート(暗殺活動)に徹し、手際よく仕事をやりとげていた「丈右衛門だった男」(矢野聖人)。ところが、自分の仕事を蔦重(横浜…
 

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