大河『べらぼう』“こじらせ隠キャ”な恋川春町が…闇堕ちからの、殻をぶち破り天才・酒上不埒が爆誕!【前編】:4ページ目
次郎兵衛兄さんが絶妙なタイミングで払った“屁”も逆効果
恋川春町が大暴れする中、癒しキャラで人気の次郎兵衛兄さん(中村蒼)が、「絶対にわざと」なタイミングで「放屁」し、会場は一気に笑いと「屁」の合唱の場に。
けれど、さらにやりきれなさ・孤独感を強めた春町にとって、この大騒ぎは逆効果です。「恋川春町…これにて御免!」とリアルに“筆を折って”帰ってしまいます。あの状況で一緒に笑って「屁」にのっかれるはずもありません。
そして今回は、歌麿に「春町先生に声をかけたほうがいい」とアドバイスされて、どうしたものかと考えあぐねて悩んでいた蔦重が、春町の元を訪ねたのでした。この時の歌麿は、“蔦重の弟”というよりも、両方の気質を理解している“蔦重の女房”のような雰囲気を漂わせているように感じました。
春町に、「あのときのこと気にしていらっしゃるなら、大事ねぇですよ。だぁれも気にしてませんから」と慰める蔦重。いかにも、プロデューサーらしいセリフです。
現代にもよくある「天才で気難しい作家と、何とか話を進めたい編集者」の構図でした。
同じクリエーター同士の“ファントーク”が一番効いた
けれども、実はこれは悪手です。春町は自分の才能や人間性に疑問を抱き、不安になり、もう誰にも相手にされないのではとナーバスになっていたのです。
こんな風に生真面目に落ち込んでいる人に「誰も気にしていない!」は、逆効果。
案の定、より追い込まれた春町は、蔦重に「拙者のほうが、あのような者らと席を共にしたくないのでな…お引き取りを!」と早口で言い返していましたが、そんな風に言ってしまう自分にも嫌気がさしている表情でした。
蔦重は遠慮しつつも、春町の態度を諭し「自分だって悔しい」と思いを懸命に伝え、だからこそ「新作で見返してやりましょう」と言いますが、落ち込んだ春町は、蔦重を強く拒絶してしまったのでした。
耕書堂に戻り、「俺の言い方がよくなかったかねぇ…けど、何ってぇか、一々考えすぎってか…」とぼやくとことが、基本的に陽キャでポジティブ思考の蔦重らしところ。
春町を立ち直らせたのは、敏腕プロデューサーの蔦重の「次の企画」の話でも慰めでもありませんでした。
春町の絵の大ファンな歌麿(同じ鳥山石燕の弟子でしたね)と、年上の親友、喜三二です。
春町の家を訪ね、目の前で “自分は春町の作品のここが好き!”トークで盛り上がって大いに笑う2人の様子は、春町の凍りついた心を暖めて溶かしていきました。
絵の才能を持つ歌麿と、売れっ子戯作者の喜三二という、作り手としての「本のプロ」(蔦重もプロですが売る側なので)が、自分の作品のファントークで盛り上がってくれる姿は、同じく作り手として嬉しいだろうな……と感じました。
「俺のような辛気臭い男がいてよいのか?」と涙ぐみながらも、やっと自分自身を前向きに受け止められるようになったようです。
蔦重のキャラと行動力・発想力が通用しない時は、チーム蔦重が欠けている部分をサポートする。歌麿と喜三二の素晴らしいフォローぶりでした。
蔦重の「そうきたか!」なアイデア力・行動力・まっすぐなコミュ力が、しっかりと仲間とのつながりを育んできたことを思わせるシーンだったと思います。
【後編】では、“隠キャ”の天才が自らの殻をぶちやぶり才能を爆発させた作品、悲しい最後についてご紹介したいと思います。
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